山形から月に2回上京して、仕事をする。新しいモデル事務所に所属し、ここ1年半くらいはオーディションにもよく受かるようになった。

「結婚してからのほうが安心して仕事に行ける感じです。オンとオフの切り替えがあるのがいいのかな。年齢的に使いやすいのかな。それとも月2回上京するための交通費を稼ぐぞという必死さがいいのかな(笑)」

 幸せに主婦をしているというリアリティも、きっとうけている理由なのだろう。私もよく女性誌で仕事をしているが、登場するモデルやタレントの見た目に「幸せ感」があるとかないとか、議論になったりするものである。 

 今の麻美さんにはそれがあるのだ。

「主婦というリアリティですか。実はあんまりそのイメージにははまりたくないんです。それでね……」

 長い髪を少しあげて見せると、短く切った前髪が登場した。

「結婚前にキューピーのCFに出させてもらったんですけど、その時に監督に私を選んでくださった決め手を聞いたら『その前髪がよかった』とおっしゃったんです。それで、個性を出すにはいいかなと思って。私、背も高くないし、クールビューティーって感じでもないから難しいんですけど、本当はモードな仕事をやってみたいんです」

 抵抗がある、というのは面白いことだと思った。「抵抗」とか「不安」とか「不可能」とか。ネガティブなことから始まって表現したい事が生まれる。なかでも「抵抗」というのは一番青い感じがする。彼女の魅力はそんなところにもあるのだと思う。

  • 出演:東麻美

    1982年埼玉県生まれ。21歳からモデルの道へ。27歳で結婚、山形へ移住、現在に至る。ミセス、Domani など女性誌のほか、大塚製薬、マツダ、ダノンビオ、キューピーなどのテレビCFにも多数登場する。
    http://www.okazaki-models.co.jp/models/AsamiHigashi/
    http://ameblo.jp/asami-higashi/

  • 取材・文:森 綾

    大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1500人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には『マルイチ』(マガジンハウス)、『キティの涙』(集英社)(台湾版は『KITTY的眼涙』布克文化)など、女性の生き方についてのノンフィクション、エッセイが多い。タレント本のプロデュースも多く、ゲッターズ飯田の『ボーダーを着る女は95%モテない』『チョココロネが好きな女は95%エロい』(マガジンハウス)がヒット中。
    ブログ「森綾のおとなあやや日記」 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

ヘアメイク:茂手山貴子 http://www.facebook.com/pages/茂手山貴子/193855654092129
撮影:萩庭桂太