山形に住んで3年。今はゆったりした生活にも慣れたが、バリバリ東京で働いていた人が、いきなり静かな田舎に暮らすのは大変なことだったようだ。

「最初の半年はどうしていいかわからなかったです。ぽかーんと空が広がっていて、景色のなかに視覚的な情報がないし。友達もいないし。突然何もしなくなった孤立感もすごかった。山形の言葉も全然わからなかった。おじいさんおばあさんに話しかけられると、本当に何もわからないので『えへへ』と笑っていました」

 東京での過度のストレスからいきなり解放されてバランスが取れなくなったというのもあったようだ。麻美さんは過換気症候群になってしまった。

「頭がぼーっとして、最初は脳内出血かと思いました。夜中に近所の病院に車で連れて行ってもらったら、お医者さんが『体の中の酸素を計ります』と。私の症状で病名がわかったんでしょうね。それで『チクビに注射します』と言われ『ええっ、乳首ですかっ』と言ったら、腕を取って『手首だから』と。先生が訛ってるから手首がチクビに聴こえたんですよ(笑)。そりゃーそうですよね、と大笑いしたら、呼吸が正しくなって……、治りました。病院でそんなアホなことを言えるんだから、私、大丈夫だと思えたんですよ」

 その切り替えのすごさが、すごい。弱いのか強いのかわからない。その不安定さがまた彼女の魅力なのかもしれない。

  • 出演:東麻美

    1982年埼玉県生まれ。21歳からモデルの道へ。27歳で結婚、山形へ移住、現在に至る。ミセス、Domani など女性誌のほか、大塚製薬、マツダ、ダノンビオ、キューピーなどのテレビCFにも多数登場する。
    http://www.okazaki-models.co.jp/models/AsamiHigashi/
    http://ameblo.jp/asami-higashi/

  • 取材・文:森 綾

    大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1500人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には『マルイチ』(マガジンハウス)、『キティの涙』(集英社)(台湾版は『KITTY的眼涙』布克文化)など、女性の生き方についてのノンフィクション、エッセイが多い。タレント本のプロデュースも多く、ゲッターズ飯田の『ボーダーを着る女は95%モテない』『チョココロネが好きな女は95%エロい』(マガジンハウス)がヒット中。
    ブログ「森綾のおとなあやや日記」 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

ヘアメイク:茂手山貴子 http://www.facebook.com/pages/茂手山貴子/193855654092129
撮影:萩庭桂太