曇り空を見つめて、小象はつぶやいた。
「世の中、こんだけ便利になったけど、昭和の頃のほうが、やっぱり楽しかったような気がします。しんどかった部分もあったけどね。僕の歌にはよく‘風’が出てくるんだけど、好きなんですよ、風が。若い頃、頑張ったあと風に吹かれて、なんて気持ち良いんだろうと思った記憶とか。窓から入ってきた風、歩いているときにさーっと吹いてきた風、良いですよね」
その言葉通り、フォークシンガー小象には昭和の匂いがある。70年代の空気感がある。でも、それだけじゃない。
 演歌やブルース、歌謡曲一辺倒だった当時、プロの作詞家、作曲家が表現しきれなかったひとりひとりの心情や恋愛模様を、プロ未満の若者たちがギター1本で歌いあげたのがフォークソングだった。ギターを持っているだけで不良と呼ばれた時代だ。
フォークを歌う若者たちは、大人たちが諦めていた自由を高らかに謳い、社会が見ないふりをしていた矛盾を嗤い、閉塞した世の中に風穴を空けようとしていた。
フォークシンガー小象の歌には、平成30年の今に対する、そんなレジスタンスの気配がある。コミカルな歌の中に2度3度、心を吹き抜ける風が仕込まれていて、何度も聴くうちに、日常の景色が以前とは違う形で見えてくる。
「ギャグのようでいて、何回か聴くと、ああ、そういうことなの? って。そういうのがけっこう多いんです。何かを声高に言ってるわけじゃなくて、情景とか風景が見えるような曲に仕立ててますけど、でも何か、感じてもらえるのかなって」
6月7日、フォークシンガー小象の『小象天狗祭り』と銘打ったメジャー発売記念ライブが開催される。愛を知らない、それでも愛を歌い続けるフォークシンガー小象を知りたいあなたは、ぜひ!

  • 出演 :フォークシンガー小象 ふぉーくしんがー しょうぞう

    2000年より小林顕作(現・宇宙レコード)とフォークデュオ「羊」を結成。その後ソロ活動を開始。2012年よりWOWOWプレミアTVBros.TV~異色テレビ誌・テレビブロスがテレビになったよ。~エンディングテーマ「テレビのない世界」を歌唱。同年文化放送ラジオ「フォークシンガー小象の夜明けのフォークソング」でナビゲーターを務める。2014年新宿末廣亭「落語色物定席」夜の部ゲストとして出演、落語ファンの絶賛を集めた。

    〈ライブ情報〉

    フォークシンガー小象
    ビクター配信記念コンサート「小象天狗祭り」

    2018.6.7 thu 渋谷7th FLOOR
    open 18:30 / start 19:00

    ☆チケット発売中
    全自由 ¥3,000 (税込・入場時別途ドリンク代)
    詳細はこちら >>>https://www.hipjpn.co.jp/archives/48909

    (問)H.I.P. 03-3475-9999

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    取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/