実は今回のメジャーデビューの引き金になったのは、４月に公開されたあの話題の映画『クソ野郎と美しき世界』がきっかけ。香取慎吾さんのパート『慎吾ちゃんと歌喰いの巻』に、なんとフォークシンガー小象は出演しているのだ。劇中で歌うシーンはないものの、挿入歌として『二人の中に泥棒がいる』が使われたのだという。
「監督の山内ケンジさんが僕のライブを見に来てくれて、声をかけてくれたんです。ありがたいです。で、勢いがついたというか、せっかくだから、映画出演という波に乗っかって、ついでにメジャーデビューもしちゃおうか、というね(笑)」
　波に乗っかって5月16日、ミニアルバムが配信される。タイトルは『フォークシンガー小象の世界』。自信作が５曲、入っている。
「ひとつ目は『待ちながらハルキ』っていう、ちょっといろんな意味でヒヤヒヤしてる曲で、ただ待ち合わせの彼女がやっとやってきた、っていう曲なんです。あとは『桜食べ』。公園の桜を食べちゃうけど害はないよっていう歌です。３曲目が『コンビニの袋』。ある日街中で、コンビニの袋が空を舞っているのを見たんですよ。いいな、と思ってね。今の時代に合ってると思いまして。それから次が『天使のケ』です。いろんなところに落ちてますよね、ケが、縮れたケが。こんなところに、え、なんで？　って。もしかして天使のケなんじゃないか？って、そういう歌です。最後に以前からライブで歌っていた『交差点』。どうしてもこの曲を入れたくて。ちょっと問題作かもしれませんね」
　小象本人によるこの解説、彼の歌を聴いたことのある人なら舌なめずりしそうなものだけれど、聴いたことのない人にとっては〝なんのこっちゃ？〟と、理解不能かも。
「たしかに。どこを狙ってるのかわかんないですよね。何かを批判してるわけでもないし、何を言いたいのかな？　っていう(笑)。全体的に、何か言いたそうだけど、何言ってるのかわからない、みたいな。ええ、そこは目指して行こうかと」
　それでも小象の歌は、聴けばすーっと、入ってくる。アーティストに向かって失礼な言い草だけど、この人、歌が巧いのだ。
「キャリア、長いですから。70年代から歌ってますから」
　って、いったい何歳なの？　明日はそのへん、聞いてみます。