そして今、ようやくメジャーデビューにこぎつけた。
「実は僕、最初は〝障害を持ったヴァイオリニスト〟と自分から言うのがイヤでした。でも障害があるのは事実だし、考え方によっては、それを切り札にすることもできる。うまくいけば、人を元気づけることもできるかもしれない、ですよね。最初は認めるのがイヤだったけど、でも、心を決めたんです。逆にコンサートを観ている間は、それを忘れさせるくらいの元気さとヴァイオリンの腕前で、みんなに認めてもらおうと。障害者だというだけで、きっと観ている人はマイナスのイメージを持ちますよね。だったらその3倍くらいの強烈なプラスイメージで払拭するしかない。中途半端なうまさだったり、中途半端な元気さだったら、けして人は認めてくれない。だから鍛えた身体で、タンクトップで演奏するんです」
 まだ、21歳。この先、式町水晶は何を目指すのだろう。
「野望はないんです。カーネギーホールで演奏するとか、全然考えてない。いっぱい稼ぎたいとも思っていなくて、ふつうに生きていけるだけの余裕があれば、それで十分なんです。でもあえて野望をひとつ言うとしたら、一生のうち1度でいいから、後楽園ホールとか格闘技系のホールで、リングの上でヴァイオリンが弾きたいかな。リング紹介されて登場したい。それくらいです(笑)」
 孤独の闘士だった少年は10年のときを駆けて、ひとまわりもふたまわりも大きくなった。
「今弾く『孤独の闘士』は、昔よりはちょっと希望がある『孤独の闘士』だと思います」

  • 出演 :式町水晶 しきまち みずき

    1996年、北海道生まれ。3歳のときに脳性麻痺(小脳低形成)と診断され、5歳のとき網膜変性症・眼球運動失調・視神経乳頭陥凹拡大(緑内障)が見つかる。リハビリの一環として4歳からヴァイオリン教室に通い始める。8歳で中澤きみ子氏に師事。10歳からポップスヴァイオリンを始め、中西俊博氏に師事。

    オフィシャルサイト(FBとTwitter情報あり)https://www.mizuki-shikimachi.com/

  • メジャーデビューアルバム●『孤独の戦士』4月11日(水)、キングレコードより発売。
    メジャーデビューアルバム発売記念コンサート●『式町水晶 孤独の戦士』ニッショーホール(日本消防会館)4月14日(土)15時30分開演

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    取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/