式町水晶のメジャーデビューアルバム『孤独の戦士』、1曲目に収録されているタイトル曲『孤独の戦士』は、彼が小学校6年生のときに作った曲だという。切々と、何かを訴えかけてくるような、心揺さぶるメロディ。静かに、何かを問いかけてくるようなその音色。このタイトルは、当時の彼自身が〝孤独な戦士〟だったことから、つけたという。

「小学校は特別支援学級から始まって、3年のとき盲学校に行き、4年でまた特別支援学級に戻りました。5年生から通常学級に通い始めたんですけど、そこで初めて、はっきりと健常者との間に壁を感じたんです。やっぱり住んでいる世界が違う。障害者というだけで、健常者より弱い、劣っていると思われる。それがどうしても許せなかった。それに僕は障害は持っているけれど、当時車椅子から降りて歩くことも出来たので、見かけは健常者なんです。だから〝どっちつかず〟と言われ、半分人間で半分妖怪、みたいな言葉を投げつけられた。徹底的にいじめられました」

でも、彼にはヴァイオリンがあった。

4歳のときから、母親はリハビリの一環として彼にヴァイオリンを習わせた。脳性マヒがあることから、さまざまな教師に断られ、12人目にようやく引き受けてくれたのが、中澤きみ子氏。さらに中西俊博氏が彼の才能を見抜き、根気強く教えてくれたという。

12歳のとき、医療刑務所に慰問に行き、受刑者を前に演奏したことがあった。そのとき、檻に閉じ込められている受刑者たちが、障害を抱える自分と重なって見えたという。受刑者たちのために作った曲が、この『孤独の戦士』。そして自分自身のための曲でもあった。

「ですからヴァイオリンは僕の精神的な支柱、だったはずなんですが、途中からそれがねじ曲がってしまい、健常者と闘うための道具になってしまったんです。いじめられてから性格もかなり変わってしまって。当時医者に、動けるのは今のうちだと宣告されたこともあり、中学生の頃は大荒れ時代でした」

  • 出演 :式町水晶 しきまち みずき

    1996年、北海道生まれ。3歳のときに脳性麻痺(小脳低形成)と診断され、5歳のとき網膜変性症・眼球運動失調・視神経乳頭陥凹拡大(緑内障)が見つかる。リハビリの一環として4歳からヴァイオリン教室に通い始める。8歳で中澤きみ子氏に師事。10歳からポップスヴァイオリンを始め、中西俊博氏に師事。

    オフィシャルサイト(FBとTwitter情報あり)https://www.mizuki-shikimachi.com/

  • メジャーデビューアルバム●『孤独の戦士』4月11日(水)、キングレコードより発売。
    メジャーデビューアルバム発売記念コンサート●『式町水晶 孤独の戦士』ニッショーホール(日本消防会館)4月14日(土)15時30分開演

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    取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/