水色のドレスはネットでレンタル。東京に雪が降ったせいで撮影前日までに届かないかも! という状況になり、上野駅まで大きな荷物を受け取りに行ったという。
「自分が好きなこと、やりたいことは、何が何でもやるんです。何年越しでも粘って粘って、手に入れます。気持ちを抑えることができないんです」
 MIZMOのリーダー、NAOが今あるのは、そんな粘り強さがあったから。女の子っぽくて華奢ではかなげな外見だけど、実はとってもタフな、頑張り屋だ。
「家の近所に音楽教室があって、3歳のときからそこに通いました。5歳からバイオリンも始めました。クラシック音楽しか知らなかったんです。でも小学校低学年のとき、TVの『ちびっ子のど自慢』で、同じ歳の女の子が『津軽海峡冬景色』を歌っているのを見て、すっごい衝撃でした。演歌を聴くのは初めてだし、しかも同じ歳の子がこんなふうに歌えるんだ!って。すぐに走ってレコード屋さんに行って、お小遣いでカセットテープを買いました。それが私の人生初の、自分のお金で買った音楽でした」
 中高一貫校に進学してからは、ミュージカル部に所属。ステージで歌う快感にめざめ、武蔵野音大声楽科に進んだ。演歌が大好きなのに、自分で歌うのはクラシックばかり。
「本屋でオーディション専門誌を買っても、ミュージカルとかアイドルのオーディション情報は載っているのに、演歌だけ、情報が何もなかったんです。でもクラシックの基礎から勉強しておけば、きっと演歌にも役立つと信じてました」
 卒業したものの、演歌歌手になる方法はわからないまま。仕方なく大衆演劇の舞台で歌ったり芝居をしたり。着物の問屋に勤めてみたり。
やっと見つけたのが演歌・歌謡曲の作曲家、水森英夫氏の門下生募集という情報だった。オーディションを受けてみたところ、「君は発声は良いけど、下手クソだね」と、相手にされず。それでもめげずに水森氏を新幹線のホームまで追って直訴したり、歌を吹き込んだテープと手紙を何通も送りつけたり。粘りに粘って、ようやく門下生になることができた。
とはいえ、そこからがまた長い。
「クラシックの発声と演歌の発声は全然違ったんです! レッスンを始めた当初は、咳き込んでしまって歌えませんでした。だんだん、歌えるようになりましたけど」
 デビューまでの間、水森氏が手がける歌手、山内惠介のコンサートスタッフとして働いていたこともある。
「グッズを売ってました。最初はお手伝いだったのに、だんだん慣れて詳しくなって任されるようになって。このままグッズの専門家になってしまうんじゃないかと、不安で(笑)」
 やがて演歌を歌う女性コーラスグループを作ろう、という企画が具体化し、めでたく高音担当として、MIZMOの一員に。メジャーデビューも果たした。
「山内惠介さんのバックステージにいたことで、スタッフの皆さんがひとりのスターを支えるためにどんなに頑張ってくれているのかを見ることができて、あの3年間は無駄じゃなかったと今では思います。それに音大に行ったことも。発声が全然違うから意味なかったのかなって思っていたけど、MIZMOがカバー曲を歌うとき、コーラスアレンジを水森先生から任せて頂けてるのは、音大で勉強していたから、なんですよね! 人生、無駄なことは何も無いってよくいいますけど、本当なんだな、って(笑)」

  • 出演 :水雲 MIZMO  みずも

    本格派演歌ガールズグループ。三声のハーモニーで演歌の新しい境地に挑戦する。
    メンバーは演歌・歌謡界の異才、作曲家水森英夫氏の門下で武蔵野音楽大学声楽科出身のNAO、NHKの歌番組でチャンピオンになり、水森氏にスカウトされたAKANE、アメリカ出身、日本のアニメ専門学校在学中に水森氏の目にとまったNEKO。2017年9月6日『帯屋町ブルース』でメジャーデビューを果たした。
    MIZMO 公式サイト http://www.mitsui-ag.com/mizmo/

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    取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/