ここで、ロシア・ジョークをひとつ。ここに妙齢の美女がいて、すぐそばにウォッカの瓶があるとしたら、女性を口説き始めるのがテノール、黙ってウォッカを飲み始めるのがバス。どちらも選べずに迷っているのがバリトン、とか。
「とても納得します。私はバリトンです(笑)。声にはキャラクターもあるんですよ。テノールは若い男性の情熱的なアリアを歌う声ですし、バスは王様とか謹厳な父親とか、重厚感が求められる。バリトンは低い声じゃないし高い声でもない、真ん中の声ですし、すべての男性の8割がバリトンじゃないかな。ですからバリトンで人を殺すような役は、ほとんどありません。殺すとしても、テノールみたいに衝動殺人ではなく計画的です(笑)。実は私も、もともとはテノールで歌っていたのですが、10年前にバリトンを歌うようになりました。そのほうが自分で無理なく歌えると思ったし、僕の声はバリトンのほうが色合いが豊かなんです」
 着実にキャリアを重ねて、ヴィタリはこれから、クラシックの歌手にとっての黄金期を迎える。そんな彼の歌声が身近に聴けるのは、今の日本に住む私たちだけ。
「この記事を見てくれた人、ぜひ一度、私のコンサートに来て下さい!」

  • 出演 :ヴィタリ・ユシュマノフ

    サンクトペテルブルグ生まれ。マリンスキー劇場の若い声楽家のためのアカデミーで学ぶ。ライプツィヒのメンデルスゾーン・バルトルディ音楽演劇大学を卒業。2013年の秋以来度々来日し、各地で公演。2015年春より日本に拠点を移した。「ドン・カルロ」のロドリーゴ、「ドン・ジョバンニ」の主役でオペラに出演。2017年3月びわ湖ホールオペラ「ラインの黄金」ドンナーを演じ、5月には「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」にも出演。日本トスティ歌曲コンクール2015第一位及び特別賞、第14回東京音楽コンクール声楽部門第二位、第52回日伊声楽コンコルソ第一位及び最優秀歌曲賞受賞。今年3月には日本の歌曲を集めたCDをレコーディングする予定。
    ホームページ http://vitalyyushmanov.com/

    〈公演情報〉
    『ヴィタリ ロシアの魂を歌う』
    関西公演2018年3月14日(水)14:00開演(13:30開場)びわ湖ホール
    東京公演2018年3月15日(木)14:00開演(13:30開場)オペラシティリサイタルホール
    問い合わせ:株式会社ジョイフル・アーツ http://joyfularts.co.jp/

  • 歌劇『イオランタ』(演奏会形式/日本語字幕付)にエブン=ハキア役で出演
    6月12日(火)18:30開演 サントリーホール

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  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/