ガレシャンのヴォーカル・山田晃士は、見ての通り怪しげな風体。彼のバンド人生は、16歳から始まった。高校の学校帰り、スポーツバッグに衣装を詰め込んで渋谷の『屋根裏』や新宿『ACB』など有名なライブハウスに出演していたという。

「その頃から、メイクしてステージに立つことになんの疑いもなく。今もそれが続いているっていうことですね」

 10代の頃はハードロックバンド『AROUGE』のヴォーカルとして活躍。さらにさまざまなバンドで活動後、オーディションを経て歌手デビュー。『ひまわり』(94年・日本テレビ系ドラマ『横浜心中』主題歌)は20万枚を売り上げる大ヒットとなった。ところが、

「メジャーデビューしたその1年間、記憶がないんです。まったくのアマチュアミュージシャンが、一夜明けたら秒刻みのスケジュールに追われる状態になっていたんですよ。当時28歳、いっぱしの大人ではあったけれど、売れたことを楽しんで、その状態の中で自分を調整してうまくもっていくということが僕にはできなかったんですね」

 で、どうしたかというと。

「逃げました。僕は逃げることに全エネルギーをかける男なんですよ(笑)。そのエネルギーがあれば立ち向かえばいいものを、逃げるのがすごく上手。そのときも周囲の合意をとりつけて、あっという間に芸能界を抜け出してパリに飛んで行きましたから」

 その後は? 尋ねると、山田はこう答えた。

「逃げ続けてます(笑)。しょっちゅう逃げる。絶対立ち向かわない。意気地がないのかな。創作することからは逃げないけど、ダメな男なんです。もちろん、より多くの人に聴いてもらうのはすごく大事だと思うし、それは否定しない。でも基本的に僕は歌っていられることが1番重要で、歌うことで日々の糧を得られれば、それで良しと思っているんです」

 そして今、山田が逃げずに熱中している活動は『山田晃士&流浪の朝謡』という6人編成のバンドと、ギター1本で歌い演じる『独り舞台』、そして『ガレージシャンソンショー』だ。

 今までの経緯を説明するために、山田は〈逃げる〉という言葉を使っているけれど、それは自分が1番輝ける場所を〈厳選している〉ようにも見える。高い歌唱力、卓越した世界観、下手に手を出すと火傷しそうな、劇薬指定のようなヴォーカリストが思い切り歌うにはたぶん、それなりの場所が必要なのだ。

  • 出演:Garage Chanson Show(ガレージシャンソンショー)

    歌手・山田晃士とアコーディオン奏者・佐藤芳明のユニット。2001年に結成、2006年にいったん活動を停止したが2013年より活動を再開。2016年10月13日デビュー13年目を飾る3枚目のアルバム『13~treize(トレーズ)~』を発売した。リリースツアー第一弾を全国各地で展開、2017年1月13日(金)渋谷Mt.RAINER HALLがファイナルステージとなる。第二弾は3月中旬より下記参照。
    ライブ予約は http://fm.sekkaku.net/mail/1344315616/

    ●ニューアルバムリリースツアー

    『13~treize~』FINAL
    1/13(金)渋谷 Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
    open18:00/start19:00
    
前売り¥4500/当日¥5000(全席自由・drink別)
    
問/PLEASURE PLEASURE 03-5459-5050
    e+でチケット発売中

    ●ガレージシャンソンショー13~treize~リリースツアー第二弾
春の演奏会『めばえ』

    3/16(木)名古屋 TOKUZO
    3/17(金)大阪 Vi-code
    3/18(土)松山 OWL
    3/19(日)福岡 ROSA ROSA
    3/20(月・祝)広島 ヲルガン座

    ●『外苑前の客人(まろうど)』

    3/28(火)南青山 MANDALA
    
客人:磯部舞子(ヴァイオリン)
    4/24(月)南青山 MANDALA
    客人:田島隆(タンバリン)

    山田晃士(やまだ こうし)

    ロックバンド『AROUGE』のヴォーカルとしてデビュー、1985年に脱退。1994年『ひまわり』(日本テレビ系ドラマ『横浜心中』主題歌)で歌手デビュー、20万枚を売り上げたがその1年後に活動を中断して渡仏。帰国後は多方面で活動を重ね、2007年『山田晃士&流浪の朝謡』をスタート。現在は『独り舞台』『ガレージシャンソンショー』など幅広く活動中。
    オフィシャルサイト【孤独中毒】http://www.koshiyamada.com/

    佐藤芳明(さとう よしあき)

    国立音楽大学在学中、独学でアコーディオンを始める。卒業後渡仏しアコーディニストDaniel Milleに師事。Pot Heads、佐藤鈴木田中など自身のリーダーバンドを持ちながら森山威男グループ、Salle Gaveau、ガレージシャンソンショー、ヨルダン・マルコフ・ブルガリア五重奏団などにも参加。国内外のライブ、レコーディング、舞台音楽などさまざまな現場で数多くの仕事をこなす。
    ライブ情報は http://www.geocities.jp/acc_sssaaatttooo/schedule.html

  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/