8月末にはスイスで行われたジャズ・フェス”Auvernier Jazz Festival”に出演。ついでにフランスとデンマークで見聞を広め、現地のミュージシャンたちとの演奏を楽しんで来たという。
「僕はジャンルとしてはジャズピアニストに近いので、日本だけでやるより海外に行けばいくほど、世界が広がっていく。海外に行くことで、今までに無かった音楽を自分の中に取り入れることができるのを感じます。自分だけで音楽を作ろうとするより、いろんな人とインタラクトする方が、新しいサウンドができやすい」
フェイスブックにはスイスのフェスで、着物で演奏する勇姿がアップされていた。今回YEOにも、その時と同じ着物姿で登場。革靴を履き、デニムの着物を着こなす姿は、ちょっと坂本龍馬風でカッコイイ。サムライというより、ピアノひとつで世の中に斬り込む、素浪人といった風情だ。
「服はコミュニケーション手段のひとつですからね。ヨーロッパで、ジーンズにTシャツ姿で『日本から来ました』って言うより、着物で行けば一発で”You’re from Japan!?”って、ウェルカム度が違うんです。フェスでもすごく、受けが良かったです。畳んでしまえばスーツケースに入れてもかさばらないし、デニムなので汚れたら洗えばいいし」
 でもこれ、海外でウケるための着物ではないという。
「数年前から着ています。縁あって京都の一加さんという呉服屋さんを紹介いただいたときに、いろいろ教えていただいたのがきっかけです。池坊東京会館でコンサートさせていただいた時とか、自分のバースデーライブでも、スペシャルにおもてなししたいときには、着物です。着るだけで気持ちが凜とするから、好きなんです」
 縁があると、いろいろ吸収するのが、永田ジョージという男。
「僕、演劇の音楽も何回かやったことがあります。1度『エレファントマン』という舞台の音楽をつけたことがあって、そこでは大きなことを学びました。あれはすごく深刻で重い物語なんですけど、でもその舞台版では、最初の10分か15分コメディタッチでお客さんを笑わせるんですよ。その上で本題に入ると、お客さんにぐさっと入り込める。だから僕もライブのときは、お客さんに笑ってもらえるように心がけます。笑うと心のバリアが剥がれるので、そこでちょっと重い曲を聴いてもらう。すると、より刺さるんです」
 行く先々で、学んでいるのだ。
「僕自身、サラリーマン時代はオーディエンスとして12年間、お金を払って音楽を聴いてきました。映画を見るにしても音楽を聴くにしても、監督やミュージシャンのエゴイズムが強すぎると『もういいかな』って、疲れてしまって、ちょっと引いちゃうんです。でもエンタテイメント性を忘れず、そこに適度にバランス良くエゴイズムをまぶしてくれれば、気持ち良く楽しめる。別にお客さんにへつらう必要はないけれど、そのバランスは僕自身、大切にしていこうと思っています」

  • 出演:永田ジョージ(ながた じょーじ)

    1976年フロリダ州に生まれ、日本・英国・米国の3カ国で過ごし18歳で帰国。クラシックピアノを4歳から始め、大学在学中からジャズピアニストとしての演奏活動を開始。卒業後は外資系IT企業に勤めながらライブを継続。2005年カリフォルニア州サンディエゴに2年間留学し、現地で唯一の日本人ピアニストとして活躍。2007年帰国後、東京での演奏活動を再開し、ジャズ、ボサノバ、ポップスと多ジャンルに渡るアーティストたちとのパフォーマンスを重ねた。2012年6月独立。独自の切り口でのジャズ&ブラジリアンをベースとしたアルバムをリリースしつつ、ライブペインティング、華道、演劇、舞踏、ファッションショーなど音楽以外の表現者とも積極的にコラボレーションを行っている。

    オフィシャルサイト http://www.groovepockets.com/

    “Shade” 発売中 (2016年6月1日発売) CD 2,000+税 GPME-0005 https://www.youtube.com/watch?v=hmqU8sUFWck

    【”Shade of Autumn” 永田ジョージ Solo Session】
    カリフォルニアでレコーディングしたソロアルバム”Shade”リリース後、ヨーロッパを旅して新たな音色を。神楽坂の名店The Gleeの艶っぽいスタインウェイピアノで、秋を感じる名曲をお届けします。
11月5日(Saturday) 13:00 at The Glee
    電話予約 03(5261)3124
ネット予約 http://theglee.jp/

    【Vocal Crossing-Route14-】
    2012年初夏からの定期開催イベント。澤田かおり、ギラ・ジルカ、伊藤大輔、3人のヴォーカリストの声を、ピアノと共に永田ジョージがサポートする。

    12月13日(Tuesday)at JZ Brat
    電話予約03(5728)0168(平日15:00~21:00)
    ネット予約 https://www.jzbrat.com/reserve/

     

    撮影協力

    池坊東京会館 http://www.ikenobo.jp/tokyokaikan/access.html

    JZ Bratオフィシャルサイト https://www.jzbrat.com/

    The Gleeオフィシャルサイト http://theglee.jp/

  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/