実は山田監督は、これまでに様々なジャンルの世界で活躍してきた人だ。

 生まれ育ったのは東京。中学・高校時代はお嬢様学校として知られる東京女学館へ。だが、「華やかな校風が自分には合わず、もっと地味な学校に行きたい」と、早稲田大学の文学部に進学。

 映画との関わりは、大学時代に映画製作サークルに所属したのがきっかけだ。自ら脚本も書き、8ミリの自主製作映画を何本も撮っていた。

 その一方で、アルバイト感覚でポルノ小説も書いていたという。

 「“女子大生ポルノ作家”として結構売れっ子で、夕刊紙や週刊誌に連載もしていました。何本も連載を抱えていたので、授業中はいつも原稿を書く時間(笑)。それなりの収入があったので、卒業後もその道で食べていこうと考えたこともありました。だけど、『エロ路線を真剣に究める気がないなら、文才を消耗させるだけだから辞めたほうがいい』と、当時の担当編集者にアドバイスされ、就職することにしたんです」

 就職先はテレビ番組の制作会社。アシスタントから、26歳の若さでディレクターに抜擢されて、バラエティや旅番組などを担当。

「自分の行きたい所に行けて、好きなものが撮れて、20代の頃はとても楽しかったですね。だけど、『やっぱり猫が好き』というドラマの演出をやらせてもらったときに、ああ、もっとドラマや劇映画の仕事がしたいなぁと思って。だけど、当時、私が務めていた制作会社ではドラマの仕事はほとんどなかった。それで、自分が本当にやりたいことをやるために、30歳のときに会社を辞めたんです」

 その名を聞けば、業界では知らない人がいないほど大手の制作会社をあっさり退社。そして、新たなキャリアを目指すため、山田監督が考えた手段がこれまたユニーク。続きは、明日のお楽しみ!

  • 出演:山田あかね

    東京生まれ。テレビ番組のディレクター、ドラマの脚本、演出、小説家、映画監督などとして数多くの作品を製作。主な作品に映画『すべては海になる』(2010年)、小説『ベイビーシャワー』『しまうたGTS』(以上・小学館)、『まじめな私のふまじめな愛情』(徳間書店)など。2012年より、犬の殺処分をテーマに単独で取材開始し、「むっちゃんの幸せ 福島の被災犬がたどった数奇な運命」(NHK総合2014年9月放送)、「生きがい 1000匹の猫と寝る女」(ザ・ノンフィクション・フジテレビ2015年3月放送)。2本目の映画監督作品となる『犬に名前をつける日』が10月31日より、シネスイッチ銀座ほかにて全国順次公開。

    映画『犬に名前をつける日』公式サイト
    http://www.inu-namae.com/

    山田あかね監督 公式ブログ
    http://yaplog.jp/akane-y-dairy/

    取材・文:内山靖子

    ライター。成城大学文芸学部芸術学科卒。在学中よりフリーのライターとして執筆を開始。以来、芸能人、作家、著名人などの人物インタビューを手掛ける。その他、書評、女性の生き方や医療、健康に関するルポなども執筆。現在は、『STORY 』『HERS』(ともに光文社)、『婦人公論』(中央公論新社)などに執筆中。著名、無名に係わらず、その人の歩んできた人生の軌跡を綴る単行本の執筆もライフワークにしている。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://www.haginiwa.com/