10月31日から1本の映画が公開される。タイトルは『犬に名前をつける日』。

 この映画は、飼い主もなく悲惨な状況下にある犬たちと、彼らを救い出す人々の姿を描いた感動のドキュメンタリー・ドラマだ。主人公を演ずる小林聡美さんを始めとする出演者、主題歌を担当するウルフルズ、そしてスタッフ全員が「犬のためにできることを何かしたい!」という思いでつながった作品だ。

 この映画の監督・脚本・プロデューサーを務めたのが山田あかねだ。しかも、制作費はすべて自腹で。カメラをまわし始めた4年前は、配給できるかどうかさえもまったく分からなかったという。

「映画会社からオファーがあったわけでもなく、どこの映画館で公開してくれるのかも皆目わからない状況でした。けれど、とにかく自分の手でこの映画を作らなきゃ、と。動物愛護センターで殺処分を待つ犬たちや東北の震災で被災地に置き去りにされた犬たちの命を救うため、全力で活動している人たちの情熱と行動力を間の当たりにしたとき、私はカメラをまわさずにはいられなかったんです」

 多大な時間と労力をかけて製作しても、もしかしたら1円の収益にもならないかもしれない。それどころか、むしろ大赤字になる可能性だってある。

 それでも、山田監督がこの映画を撮ろうとした理由は何なのか? そして、“自腹で1本の映画を製作・監督”という、ある種、無謀な冒険に果敢に挑んだ山田監督とはいったいどんな人なのかを、今日から5日間に渡ってお伝えしていこう。

 今週のYEOは、ちょっと硬派です!

  • 出演:山田あかね

    東京生まれ。テレビ番組のディレクター、ドラマの脚本、演出、小説家、映画監督などとして数多くの作品を製作。主な作品に映画『すべては海になる』(2010年)、小説『ベイビーシャワー』『しまうたGTS』(以上・小学館)、『まじめな私のふまじめな愛情』(徳間書店)など。2012年より、犬の殺処分をテーマに単独で取材開始し、「むっちゃんの幸せ 福島の被災犬がたどった数奇な運命」(NHK総合2014年9月放送)、「生きがい 1000匹の猫と寝る女」(ザ・ノンフィクション・フジテレビ2015年3月放送)。2本目の映画監督作品となる『犬に名前をつける日』が10月31日より、シネスイッチ銀座ほかにて全国順次公開。

    映画『犬に名前をつける日』公式サイト
    http://www.inu-namae.com/

    山田あかね監督 公式ブログ
    http://yaplog.jp/akane-y-dairy/

    取材・文:内山靖子

    ライター。成城大学文芸学部芸術学科卒。在学中よりフリーのライターとして執筆を開始。以来、芸能人、作家、著名人などの人物インタビューを手掛ける。その他、書評、女性の生き方や医療、健康に関するルポなども執筆。現在は、『STORY 』『HERS』(ともに光文社)、『婦人公論』(中央公論新社)などに執筆中。著名、無名に係わらず、その人の歩んできた人生の軌跡を綴る単行本の執筆もライフワークにしている。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://www.haginiwa.com/