さて、魚住誠一さんのインタビューの後、熊谷優花ちゃんの話を聴くべく、私たちは場所を「村さ来」に移すこととなった。言わずとしれた、気さくな居酒屋である。

 フォトグラファーは気さくな居酒屋が好きである。若手落語家の話の枕によく使われる「さくら水産」が候補にあがったが、今回はそこよりも少し高級な「村さ来」になった。ちなみに前回のLeica Barの打ち上げは「月の雫」で、1人1600円の割り勘であった。

 バブル女だった私も、すっかりこういう店の楽しみ方に慣れた。今では「月の雫」の380円メニューを「高い方」と言えるまでになった。

 優花ちゃんはにこにことウーロン茶を飲んでいた。アルコールは飲めないらしい。なんと魚住さんもノンアルコール。意外であった。そもそも彼女はなぜ「ポートレート専科」に応募したのだろうか。

「2011年、2012年と、続けて『御苗場』という写真展に出させてもらっていたんです。そのときに、魚住さんが来られていて『オーディション、受けてみない』と言ってくださったんです」

 彼女の写真は人の体を彫像のようなフォルムで見せる。自身の雰囲気からはかけ離れ、男女どちらが撮ったともわからない、アーティスティックで骨太な作品だ。魚住さんは彼女の写真を見てこう思ったという。

「20年前から写真をやってきて、こういうパターンの作品も見てきてはいるけど、独特の空気感と湿度があって、彼女みたいなコが撮ってるとは思わなかった。他のカメラマンが『人生に疲れた50歳くらいのおじさんの作品だと思った』と言ったくらい」

 にこにこしながら、ひたすらウーロン茶を飲む優花ちゃん。

 なんで裸を撮りたいと思ったの?

  • 出演:熊谷優花

    1988年、福岡生まれ。08年、香蘭女子短期大学被服学科に入学、染色を専攻するが、写真を志し、09年に日本写真映像専門学校に入学。APAアワード2011 社会法人日本広告写真家協会公募展 写真作品部門 学生賞など受賞歴多数。秋葉原のカフェで働きながら、東京で撮影活動中。

  • 取材・文:森 綾

    1964年8月21日大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1200人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には女性の生き方についてのノンフィクションが多い。『キティの涙』(集英社)の台湾版は『KITTY的眼涙』(布克文化)の書名で現在ベストセラー中。
    http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影協力:ライカプロフェッショナルストア東京
http://jp.leica-camera.com/service/leica_professional_store_tokyo/

協力:ポートレート専科 http://portraitsenka.jp/
撮影:萩庭桂太