カメラをもって微笑むこの女のコ、若干24歳のフォトグラファー、熊谷優花ちゃんである。なんでも、大阪の写真学校に在学中からいろんな賞をとって注目され、現在は東京・秋葉原の人気カフェで働きながら写真を撮っているという。

「というわけで、その熊谷さんに、今年の『ポートレート専科』のナビゲーターになってもらうんだよ」

 そう言う萩庭桂太はその「ポートレート専科」で常任カメラマンを務めるプロのうちの1人なんだというのだが、そもそも「ポートレート専科」って何? 

 実はこれ、プロとアマチュアのカメラマンが共催する写真展イベントで、発案者はプロ・フォトグラファーの魚住誠一さん。安西肇似のこの人は、当初、mixiで同様のコミュニティを立ち上げ、6年前に現在のようなリアルな写真展イベントにしてしまった。そしてその翌年、萩庭桂太も参加することになったのだという。

 以来、毎年毎年、6、7人の有名フォトグラファーがこの1週間のために準備し、開催時には無料でセミナーなどを行うというのだ。きっとそこには、日本の写真界にとっても、何か大きな意義があるに違いない。

 そう思った私は、さっそく萩庭桂太に電話した。

「で、萩庭さんは何に意義を感じてこのイベントに参加したんですか」

 萩庭桂太はうーん、と言うなり沈黙してしまった。私はつっこんだ。

「ほら、プロがそれだけの時間を使うわけなんだし、なんかあるでしょう? 世の中の写真に対する注目を高めるとか……」

 萩庭桂太はへらへら笑って言った。

「酔っぱらってたんだよ。それで、やるやるって、言っちゃってさー」

 私は深い話をしようとしたことを本当に後悔した。

 しようがないな。魚住さんに話を聴きにいくか。

  • 出演:熊谷優花

    1988年、福岡生まれ。08年、香蘭女子短期大学被服学科に入学、染色を専攻するが、写真を志し、09年に日本写真映像専門学校に入学。APAアワード2011 社会法人日本広告写真家協会公募展 写真作品部門 学生賞など受賞歴多数。秋葉原のカフェで働きながら、東京で撮影活動中。

  • 取材・文:森 綾

    1964年8月21日大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1200人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には女性の生き方についてのノンフィクションが多い。『キティの涙』(集英社)の台湾版は『KITTY的眼涙』(布克文化)の書名で現在ベストセラー中。
    http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

協力:ポートレート専科 http://portraitsenka.jp/
撮影:萩庭桂太