熊谷優花ちゃんが初めてカメラを手にしたのは、小5のとき。

「父の一眼レフを借りて、福岡の田舎で空ばっかり撮ってました。写真学校に入るまではそのカメラを使っていました。デジタルじゃなくてフィルムでしたね。その後、大阪の写真学校へ通うことになったんですが、大阪へ行きたかったのは、太陽の塔があるからでした。

 私、太陽の塔が大好きで、福岡に住んでいる頃から、何度か見に行ってました。どうせ写真を勉強するなら、あの太陽の塔の近くで、と思ったんです」

 アートが好き。この人は「作品」にこだわり続ける。

「そこにあるものを撮るのがスナップ。頭の中に絵が浮かんで、それを撮るのが作品。イメージを形にするというか、写真にする。でも私の場合、まだ作品と呼べるものになっているかどうか。だからこそ作品に向かっていきたい。でもその反面、そこにあるものをきれいに撮ったりできないと、写真でお金を稼ぐことはできない。将来、両方やっていけるかどうか。ここ1年、じっくり考えてみたいと思っています」

 走ることで、絵を描くことで、あるいは書くことで。また楽器を弾くことで、語ることで。心を練り、ふくらませ、自分を成長させていく方法は人それぞれだ。だから写真を撮ることで変化していく人たちも、いる。

 私はもともとフォトグラファーという職業の人たちがあまり好きではなかった。それはなんだか楽そうで、簡単にお金をもらっていると思っていたからだ。

 でもそうじゃない。彼ら彼女らは「好きなことを仕事にする」という、最も困難な道を選んでしまった人たちなんだと、今は思う。

「ポートレート専科」はそんな彼ら彼女らが胸のうちの恥ずかしいところまで見せてしまうお祭りである。

 熊谷優花ちゃんに会いたいと思った方は、ぜひぜひ足を運んでいただきたい。

  • 出演:熊谷優花

    1988年、福岡生まれ。08年、香蘭女子短期大学被服学科に入学、染色を専攻するが、写真を志し、09年に日本写真映像専門学校に入学。APAアワード2011 社会法人日本広告写真家協会公募展 写真作品部門 学生賞など受賞歴多数。秋葉原のカフェで働きながら、東京で撮影活動中。

  • 出演:魚住誠一

    グラビア、広告などを中心に活躍するフォトグラファー。「ポートレート専科」を主宰する。
    http://zoomic.jp/

  • 取材・文:森 綾

    1964年8月21日大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1200人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には女性の生き方についてのノンフィクションが多い。『キティの涙』(集英社)の台湾版は『KITTY的眼涙』(布克文化)の書名で現在ベストセラー中。
    http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

協力:ポートレート専科 http://portraitsenka.jp/
撮影:萩庭桂太