Bunkamuraオーチャードホールといえば、世界の一流と言われるクラシックやバレエが上演される場所だ。たまに開かれるコンサートも、加藤登紀子とか大貫妙子とか、大御所の、歌をじっくり聴かせるシンガーだけのものだ。

 そこにいきなり18歳の韓国の女性シンガーが、しかもデビュー前に登場するというのは、かなり異例なことである。

 会場に入って、驚いた。セッティングはフルオーケストラにギターとピアノ。ギターは作曲家としても有名な鳥山雄司だ。これだけの人を揃え、2日間も会場を押さえるということになると、数千万円はくだるまい、とつい関西人の習性で金勘定してしまう自分が悲しい。それだけの額を投資される新人は、今の日本にはいないだろう。

 音合わせが完璧に行われたところでIU(アイユー)が現れた。

 164センチの痩せた体つきは、想像した以上に少女っぽい。

「まずダンスリハから行いまーす。IUさんは入れるところだけお願いします」

 当初は黙ってダンスを見ていた彼女が、すぐに待ちきれないように通訳を呼んだ。

「歌ってもいいかな」

 もちろん、の返事が出ると、舞台の空気が一挙に華やいだ。オーケストラのメンバーも18歳の実力を固唾を飲んで見守る。

 彼女が歌い始めると、壮大なバックにふさわしい透明感ある声がいきなり会場中に伸び渡り、空気が浄化されたかのように思えた。

(取材・文:森 綾)

  • 出演:IU (アイユー)

    本名はイジウン(Lee Jieun)。1993年5月16日生まれの18歳。身長164cm。IUという名前には「I&YOU」、私とあなたが音楽でひとつになるという意味が込められている。中学3年生だった2008年にミニアルバム「LOST&FOUND」でデビュー、その圧倒的な歌唱力とキュートなビジュアルから「国民の妹」と称され、男女・世代を問わず愛されている。これまでに2枚のフルアルバムと4枚のミニアルバム、4曲のデジタルシングルをリリース。2010年12月発売の「Good Day」(Album「REAL」収録)は、チャート1位を5週連続記録し、トップ・ソロアーティストとして不動のポジションを誇る。2011年12月14日アルバム「I□U」(アイユー)<ライセンス盤>発売。(オリコンウィークリーチャート15位!!)。そしてこの3月21日、日本でのデビュー・シングル「Good Day」がリリースされる。

    IU PC OFFICIAL SITE http://iloveiu.jp
    IU MOBILE OFFICIAL SITE http://iu-net.jp
    EMI IU ARTIST SITE http://www.emimusic.jp/artist/iu/

  • 取材・文:森綾

    1964年8月21日大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て92年に上京後、現在に至るまで1200人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には女性の生き方についてのノンフィクション『キティの涙』(集英社)、『マルイチ』(マガジンハウス)など多数。
    映画『音楽人』(主演・桐谷美玲、佐野和眞)の原作となったケータイ小説『音楽人1988』も執筆するほか、現在ヒット中の『ボーダーを着る女は95%モテない』(著者ゲッターズ飯田、マガジンハウス)など構成した有名人本の発売部数は累計100万部以上。
    http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影:萩庭桂太