カミングアウトしたことで、清貴の人生はがらり、色合いを変えたという。
「人と会うことが楽しくなりました。ありのままの自分を見せることができる、自分はこういう人間です、と自分を開いていられるので、清々しい気持ちでいられるし、相手も素直に自分を見せてくれるのがわかります。ああ、人間本来のコミュニケーションはこうあるべきなんだなって、思いました。人って、鏡なんですね。自分が相手に楽しんで欲しいと思い、笑顔で向かい合うと、相手も笑顔を返してくれます」
 セクシュアル・マイノリティの活動に、自ら参加するようにもなった。
 2015年、『OUT IN JAPAN』プロジェクトに依頼され、まずは『We Are One』を提供、そして4年後の今年、『虹の向こうへ』を第2弾として提供したのだ。
『OUT IN JAPAN』というのは、セクシュアル・マイノリティの人たちにスポットを当て、ポートレートを撮影し、5年間で1万人のギャラリーを目指すというプロジェクト。LGBTの人たちを可視化することで、あなたの身近にもいるんだよ、と伝えようとするものだ。
 世間に根強く残る偏見に屈することなく、好きな人を好きと言おうとする人たちのポートレートを、清貴の歌声がバックアップしている。どちらの曲にも、誰かを愛する気持ちの尊さ、自分を受けいれてもらえると人にも優しくなれること、そして誰かの幸せを願うことは自分の力にもなる、というメッセージが、ぎっしりと詰め込まれている。
 そのメッセージはセクシュアル・マイノリティの人たちだけでなく、今を生きるすべての人に伝えたい、清貴からの愛のメッセージだ。
 それにしても。ここ10年で、セクシュアル・マイノリティの人たちのイメージはずいぶん変わってきた。偏見は以前より少なくなったのでは?
「たしかに東京とか都市部にいると、そして僕が仕事をする音楽関係、芸術関係、マスコミ関係の方たちは、実際そういう方もいるし、理解してくれる人も多いです。でも地方に行くと、そのエリアによっては、それはテレビの中だけのものだと思っている人がまだまだ、たくさんいます。たとえばゲイBARに行けばそこでみんな楽しく会話しているけれど、会社とか学校ではひた隠しにして暮らしている人が、本当に多い。場所場所で、温度差は激しいです。自分の本当の気持ちを表に言えない、昔の僕みたいな想いをしている人は、今も世の中に多いと思います。そういう人たちにも僕の曲を、届けたいです」