本当に歌のうまい人なのだ。声もいい。詩を書き、メロディを生み出し歌う、シンガー・ソング・ライター、清貴。この人の歌には、パワーがある。
 19年前、17歳で鮮烈なデビューを果たした当時は、ゴスペル調の圧倒的な歌唱力に注目が集まった。現役高校生にして自作の曲でデビュー。きっかけは、レコード会社に初めて送ったデモテープだったという。
「もともとスティービー・ワンダーとかホイットニー・ヒューストン、アレサ・フランクリン、マライア・キャリーが大好きで、そういうゴスペルに影響を受けたアーティストたちに小さい頃からすごく惹かれて、ずーっと聴いていました。ゴスペルは歌詞だけでなくさまざまな歌声のニュアンス(grace note)で、いろいろな感情を表現するんです。嘆きだったり、哀しみだったり、自分の感情から出てきたものを表現できる。そういう部分を自分で研究していました」
 3枚目のシングル『The Only One』が40万枚の大ヒット。でもその後、彼の活動は徐々に失速してしまう。27歳のとき、〝もう限界〟と感じて日本での活動を停止し、渡米した。
「そのときの経験が、今自分が音楽をするきっかけになっている、原動力になっていると思います。ゴスペルのルーツは虐げられた人たちの歌、負を背負った者たちの反動からくる音楽だと思うんですけど、僕自身も自分の中にそういう負の要素を持っていた。自分のセクシュアリティ、ゲイであるということを表だって言えない、鬱屈したところがあったからこそ、そういうものに惹かれたのだと思います」
 5年後に帰国。そして今、彼の作る曲は、明るくなった。今年5月中旬に配信スタートした『虹の向こうへ』という曲は、〝今までの人生の集大成〟だという。
「生きづらさを抱えていた時代から、いろいろな方の支えがあって、今自分がこうして歌えている。それに対する感謝の思いと、人が人を想う気持ちの尊さ、そして受け入れてもらえると、人は人にどんどん優しくなれること。誰かの幸せを願うことが、自分の幸せにもなるということ。そんな僕のメッセージがギュッと詰まった曲です」
 今週のYEOは、そんなアーティスト・清貴をクローズアップ。ゴスペル・クアイアを率いる『歌の伝道師』としての活動も紹介しつつ、金曜日まで連日更新します。

  • 出演 :清貴 きよたか

    宮城県仙台市出身。2000年、17歳でシングル『No No No』でデビュー。3rdシングル『The Only One』がTVドラマ『Pure Soul~君が僕を忘れても~』の主題歌に起用され、40万枚の大ヒット。2010年渡米。アメリカ最大のゴスペルフェスティバル『McDonald’s Gospel Fest2010』で日本人クワイアのソリストとして出場し、優勝。アポロシアター『ゴスペル ナイト』にスペシャルゲストとして招待される。2015年帰国。『TOKYO RAINBOW PRIDE 2015』で自身もLBGTのひとりであることを告白し、その想いを綴った『WE ARE ONE』を歌った。同曲はセクシャルマイノリティの人々の可視化を目指すプロジェクト『OUT IN JAPAN』公式テーマソングとなった。2016年よりフジテレビ系列パラスポーツ公式アーティストに任命され、各地のパラスポーツイベントで歌唱している。また2016年から自身の経験を生かしてクアイア(合唱団)を結成、日本各地で『SING FOR JOY』の活動を続けている。

    ホームページ http://g-glamour.com/kiyo/

  • 【新譜情報】
    『虹の向こうへ』
    配信は5月中から始まっているが、シングルCD 6月8日発売。直接手渡ししたいとの想いから、全国6カ所で開催中のSING FOR JOY、そしてライブ、イベント会場で限定発売される。本作は『OUT IN JAPAN』テーマソング。ジャケットは人気漫画家・きたがわ翔の書き下ろし。CD盤だけに岩城直也氏編曲のString Orchestra Ver.を収録している。

    https://linkco.re/S77RPH8N

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    取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/