結婚して出産して〈大人〉になった笹本玲奈は昨年、早速大きな役にチャレンジした。『ジキルとハイド』の娼婦ルーシー、そして『マリー・アントワネット』の王妃マリー・アントワネットだ。
「王妃と娼婦、まさに正反対の役どころですよね。私はもともと貧しい役を演じることが多くて、ですから娼婦の役に関しては、意外と受けいれてもらいやすいというか、ボロを着ているほうが観客の皆さんは見慣れているというか(笑)。でも王妃の役、位の高い役というのを今まで演じたことがなかったので、そこは苦労しました」
 役に立ったのは、幼い頃からしょっちゅう観ていた宝塚のステージ。
「ドレスを着たときにどういう所作をすればいいのか、見て学んできたところはあったので、それほど違和感はありませんでした。でも意識的なところ、王妃ならではの落ち着きとか威厳とか存在感とかオーラとか、そういうものは経験しないと出てこないですよね。舞台の上で自分が王妃として呼吸できている、と実感するまでに、かなり時間がかかりました」
 さらに、マリー・アントワネットという役が教えてくれたことがある。
「マリーは、フランス王室のガチガチに固められた生活の中で、自分らしく生きようとした女性なんです。自分らしさを常に追求して生きる姿に、すごく憧れます。私はどちらかというと流されやすいタイプだし、流されて安心するというか、ふだんあまりこう、自分の意見を言わないほうなんです。ふつうの人間だと思うんですけど、あまり前に出たくない(笑)。でも彼女は嫌なことは嫌だとはっきり言うし、間違っていることは間違っていると周りの人に伝える。ひとりの女性として、彼女から多くのことを学んだと思います」