彼女のデビューは、『ピーターパン』。きっかけはオーディションだった。プロ、アマを問わず、全国から〝ピーターパンをやりたい!〟という子どもたちを集めた「セブンーイレブンPRESENTSザ・ミュージカル・アイドル・オーディション NEWピーターパン」で、その頂点に立ったのだ。
「ミュージカルをやりたくて、小学生の頃からダンスを習って、実はそれまでにもいろんなオーディションを受けていたんです。でも、ダメでした。劇団に入っていなかったせいか、なかなかチャンスがなくて。小学校5年生のとき、ある作品の王子役でオーディションを勝ち進んでいき、やっと出られるかもしれない、と期待していたのですが、結局本物の男の子でやることになり、出演は叶いませんでした。すごいショックだったんですけど、その半年後に『ピーターパン』のオーディションに巡り会いました」
 歌も踊りも演技も秀逸で、しかも可愛い。すい星のようにミュージカル界に登場し、以来、彼女はミュージカル界のプリンセス。人気ミュージカル公演に次々と出演し続けている。
「でも、今でも役をいただくために、オーディションを受けることはあります。受かるものもあれば、落ちるものもあって、それはデビュー前と変わりません。落ちればすごくショック、ですしね(笑)」
 キャリアがあっても実力があっても、役をつかむためにはオーディションという関門がある。ショービズの世界は厳しいのだ。
 逆に、華々しいキャリアが邪魔になることもある。好演し、熱演が評価されたときの印象が強ければ強いほど、そのイメージが固定してしまうことも。
「ですからオーディションにはなるべく、笹本玲奈らしくないスタイルで行くようにしています。どれだけ役に近づけられるのか、服や髪型にも気を付けて、本当にまっさらの、新人の気分で臨みます」
 その積み重ねが、20年。
「オーディションで歌ったときの感触で、自分が受かったか、受からなかったか、大体わかるんです。ですから手応えがないときは、後から結果を聞くと、〝ああ、やっぱり〟っていう結果です(笑)。でも自信があるなしとは関係なく、たとえ落ちても〝今落ちるのには意味がある〟って思えるようになったんです。そういうことを何度も経験して、試行錯誤して努力を重ねてきたからこそ、今の私があるんです」