#5 病気が教えてくれたこと
コントラバスとラムゼイハント 程嶋日奈子
- Magazine ID: 3724
- Posted: 2018.06.01
発病後、程嶋はそれまでの生活そのものを見直した。
「発症する前、スケジュールがパンパンな状態だったんです。まだ30代半ば、自分の健康を過信していたし、ずーっと休みも取らずに働いていました。でもここで生活を整えないと、長くこの超不規則な業界にいるのは無理ですよね」
バランスの良い食事をこころがけ、定期的に休日をとることを決め、それまで雑然としていた家を掃除し、さらに断捨離を決行した。
「服も本も、半分くらい捨てました。今までゴミと暮らしていたんだな、と思いましたね。家の中がスッキリしたら、いろいろな予定も捨てられることに気が付きました。病気によってできることのキャパが小さくなった分、自分のできること、本当にやりたいことだけに絞るようになった。そのおかげで仕事がめっちゃ早くなったんです。身の回りをミニマムにして、ちゃんと休みをとるようにして、人として生活するようになったんじゃないかな(笑)」
その結果、思わぬ効果が出たという。
「病気を克服しつつあるなと感じ始めた今年の4月から、すでに3曲も書けたんです。病気する直前は、それこそ曲を書こう、書かなきゃと思っても1曲も書けなかったのに! あと、自分のバンドでちゃんと活動しようという意欲がフツフツと湧いてきました。以前はサポートの仕事に追われて、自分のバンドをやれなくなっていたんです」
病気になったのは不幸な出来事だけれど、それを機に程嶋の人生は、かなり大胆にリセットできたようだ。
「このスタイルで仕事をしていたらダメになると思っても、人はそれを放置しがちなんですよね、軌道修正するのは難しいから。そしてやがて、限界が来る。私は病気のおかげで、自分のしたい仕事をより良いクオリティでやるために、必要なことを選び取れるようになりました。それが1番良かった。人生で大事なものを、自分で選べるようになったんです」
リーマンショック、東日本大震災、そしてラムゼイハント症候群。次々に立ちはだかる壁は、程嶋日奈子が程嶋日奈子であるための、大事な試練でもあった。
「まだ完治とはいえないけれど、私は必ず、以前よりも良い状態になろうと決めています。自分のレベルを1個上げて、ちゃんと復活します、いろんな意味で」
すでに日本中のあちらこちらで、程嶋は活動を再開している。オーソドックスでちょいハードで、華やかでゴリッとしたジャズが聴きたい方は、ぜひ彼女のライブへ!
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出演 :程嶋日奈子 ほどしま ひなこ
1982年、神奈川県藤沢市生まれ。4歳からピアノを、15歳からクラシックコントラバスを学び、早稲田大学モダンジャズ研究会に加入。大学卒業後、外資系コンサルティングファームで3年働いた後、退職。ジャズベーシストとして活動を開始した。ジャズビッグバンド・コンボはもちろん、クラシックやポップスなどジャンルを問わず多くのシーンで活躍中。
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取材/文:岡本麻佑
国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。
撮影:萩庭桂太
1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
http://keitahaginiwa.com/