#2 世界的な指揮者ショルティが認めた才能
ピアニスト 田崎悦子
- Magazine ID: 3661
- Posted: 2018.01.16
音楽学校を出ても、すぐに音楽の仕事で生計を立てられるわけじゃない。世界最高峰とされるジュリアード音楽院を卒業しても、その厳しさはかわらない。そこから田崎の下積み生活が始まった。
「ニューヨーク市が音楽家の卵を支援するシステムがあって、プロの演奏活動に入る前に学校や刑務所とか病院に行って演奏する仕事があるんです。1度、精神病院で演奏したときには、患者のオジサンがすごく感動してくれて、『俺がマネジメントしてやる』って、もちろん本当のマネージャーではなかったけれど(笑)。あちこちの奨学金を得るためのオーディションもかたっぱしから受けて、そこらへんにあるものすべて、かっさらいました(笑)。そうじゃないと明日の部屋代を払えない、という時期もあったんです。3~4年はそういう生活でしたね」アメリカにはロックフェラーやブッシュ財団等が数多くあり、支援してくれるシステムになっている。
同時にニューヨークでは、クラシック界にいるだけでは味わえない体験もした。前衛音楽家として名高いジョン・ケージとの交流も、そのひとつ。
「ジョン・ケージやオノ・ヨーコとも付き合いがありました。私がまだ若くて、しかも好奇心旺盛なものだから、可愛がってもらった。ベートーヴェンも弾くけどそういう実験的な音楽にもトライする、両刀遣いっていうのかな(笑)」
やがて徐々に実力を認められ、音楽界の巨匠のオーディションを受けることになる。そんな中、彼女は世界的指揮者ゲオルグ・ショルティに認められた。〈日本人の若い女性がシカゴシンフォニーとデビュー!〉これは今も語り草になっている、大きな出来事だった。
その成功を足場に、田崎は欧米で演奏活動を続けてきたのだ。
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出演 :田崎悦子 たざき えつこ
桐朋学園音楽科高校卒業後、フルブライト奨学金を得てニューヨーク・ジュリアード音楽院に留学。卒業後30年間国際的に演奏活動を続けた。1971年ヨーロッパデビュー。72年カーネギーホールデビュー。79年世界的指揮者ゲオルグ・ショルティに認められ、シカゴシンフォニーとデビュー。サヴァリッシュ、スラットキン、ブロムシュテット、小澤征爾など世界第一線の指揮者と協演。日本でもN響をはじめ各地のオーケストラと協演。2015年には『三大作曲家の遺言』シリーズでベートーヴェン、ブラームス、シューベルトを演奏、絶賛を浴び、NHKBSプレミアムにて複数回放送中。アメリカワシントン大学教授、東京音楽大学教授、桐朋学園大学及び同大大学院特任教授歴任。2002年よりピアノ合宿『Joy of Music』八ヶ岳と奈良、カワイ表参道「パウゼ」にてシリーズ『Joy of Chamber Music』『Joy of Music40+』総合ディレクター。
ホームページ http://www.etsko.jp/田崎悦子・ピアノリサイタル『三大作曲家の愛と葛藤』
前編5月26日(土)2:00開演 後編10月13日(土)2:00開演
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取材/文:岡本麻佑
国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。
撮影:萩庭桂太
1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
http://keitahaginiwa.com/