みんな大好き、いなり寿司。そして今週のＹＥＯの主役は、〈いなり王子〉だ。
一見、フツウのオジサン。だけど油揚げをはがして中身を覗いてみると、人生いろいろ、おいなりさんいろいろのネタ満載、具だくさんなお人柄。
今週はこの濃いぃ味付けの王子を金曜日まで連日更新するので、覚悟して！
　そもそもどうして〈いなり王子〉に？
「子どもの頃から、好きでした。運動会とかお正月とか、ふだんは共働きで忙しい両親が、ずうっと笑顔でそばにいてくれる。そのシチュエイションには必ずそばに、いなり寿司があったんです。幸せな思い出と直結して、イコール、いなり寿司はおいしいものって刷り込まれちゃったんですね。それにウチの田舎のほうでは〈初午（はつうま）〉をお祝いする習慣がありまして、毎年親戚一同30人ほどが集まります。そこには必ずおいなりさんとふつうのお寿司とぜんざいが出てくるんです。家族総出でその都度、150個くらいは作っていましたね。五穀豊穣を祈る食卓には、おいなりさんが必須なんです」
　王子の両親は九州出身。先祖はお稲荷様を祀っており、祖母は代々巫女だったとか。出自からして、おいなりさんとは深い縁で結ばれているのだ。
「で、15年ほど前にサラリーマンを辞めまして、フリーランスで仕事を始めたんですが、デザインや企画の仕事をしていると寝食忘れちゃうし、食事をするのも面倒なんですね。そこにいなり寿司を用意しておくと、甘いし、おいしいし。あと、徹夜して仕上げた仕事をクライアントに届けて、ふとみると向かい側に豊川稲荷さんがありまして。境内にある『家元屋』さんはいなり寿司のルーツみたいなお店ですから。そこでおいしくいただいていました、いつも」
　15年間、ほぼ毎日いなり寿司を食べ続け、これまで食べたいなり寿司は18000個以上！
「3年ほど前になりますか、仲間うちで飲んでいるときに〝いなり寿司が好き！〟って話していたら、〝じゃあ、協会とか作ってみる？〟という話になったんです。私はもともと味にこだわるほうじゃなくて、それまでは近所のコンビニのいなり寿司ばかり食べていたんですけど、〝それじゃつまらないから、いろんなところのを食べてきなよ〟と言われ、〝記録も残したほうがいい〟と言われ、それを律儀にこなしているうちに、とんでもない量の資料が集まってしまったんです。はい、私は協会の広報担当というか、そういう立場で」
　昨年９月にテレビ番組『マツコの知らない世界』に出演するや、いなり寿司ブームに火がつくと同時に、〈いなり王子〉の独特な愛すべきキャラにも注目が集まった。〈いなり王〉ではなく、〈ミスターいなり〉でもなく、〈いなり王子〉。いったい、何者？