#4 本当にしたいこと、できること
服飾作家 加藤千晶
- Magazine ID: 3528
- Posted: 2017.05.25
「リセットしたいという気持ちを抑えられなくなって、デザイナーをしていたアパレル会社を飛び出しました。大抵の人はもっと頭がいいし、要領がいいから、私たちデザイナーはふつう、次の会社と契約してから辞めるものなんです。でも私は次のことも考えたくなかった。人と会いたくなくて、日本にもいたくなくて、旅にでました。ヨーロッパ9カ国38カ所、行く先々の教会に足を運んで・・・、別に信仰があるわけじゃないんですけどね。そこで出会った人の家に泊めてもらったり、バックパッカーみたいな旅です」
3ヶ月後、日本に戻り、あらためて自分の行くべき道を考えた。
「鏡の前で、自分と対話したんです。〝本当にあんたは何がしたいの? どうやって生きていくの?〟って。出た答えはこうでした。〝洋服が嫌いになったわけじゃない。人が嫌いになったわけじゃない。ここまで縁があった洋服を、今さら辞めても何もできない。だったら服を通して自分の思いや職人さんたちの思いを、直接伝えられるスタイルを作っていこう〟」
2009年、独立してデザインオフィス「a.ladonna.」を設立。いとへんのプロジェクトを次々と立ち上げた。
最初は、「糸」。世界でここにしか残っていないと言われる京都のマーブルプリントを使って服をデザインした。次が、「結」。着心地のよい、軽くて締め付けないマタニティのウエディングドレスをデザイン。さらに「綴」。コーヒーアーティストの作ったオリジナルプリントでデザイン。これらの作品をトランクに詰め込み、行く先々で展示会を開いて、セミオーダーという形で生産販売したという。日本国内だけでなく、ときにはNYやヨーロッパ各地、トルコまで足を伸ばしたとか。さらに「繋」というプロジェクトでは、アーティストの舞台衣装やステージ衣装まで手がけている。
「20代の頃からお付き合いのある工場さんにご協力いただいて、最小限のロットから生産してもらい、作っています。手間も時間もかかるので、ほかの仕事の合間にやっていただいています。一枚たりとも無駄にしたくないし、セールにも出したくない。アパレルの今までのやり方とは違います。流行やシーズンとは関係なく、だんだん作品を積み重ねていく。個人デザイナーの強みを活かしたいんです」
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出演 : 加藤千晶 かとう ちあき
服飾作家 1978年生まれ、三重県四日市市出身。バンタンデザイン研究所を卒業後、アパレルデザイナーの経験を約10年積み、2007年フリーランスになる。2009年デザインオフィス「a.ladonna.」設立。服だけにとらわれないさまざまなジャンルとコラボレーションしながら作品やイベントを創り出している。アーティストのステージ衣装やウエディングドレスのオーダーメイド、衣装のアレンジ、リメイクも多数手がけている。
ホームページ a.ladonna http://a-ladonna.com/“a.ladonna.-sale” SHOP http://aladonna.fashionstore.jp
“a.ladonna.-rental” SHOP http://aladonnarent.thebase.in
バリアフリープロジェクト“a.ladonna.+”
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お問合せはinfo@a-ladonna.comまで撮影取材協力 (株)江戸ヴァンス
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取材/文:岡本麻佑
国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。
撮影:萩庭桂太
1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
http://keitahaginiwa.com/