映画にしてもドラマにしても、昭和前半から中盤までの日本を描く風景には、男性も女性も、素敵なファッションがたくさん登場する。色も柄もデザインも、大量生産一辺倒の今とは違い、一点一点違っていて、手作りならではの心がこもっている。今と比べて、当時の人たちはそれほどたくさんのアイテムは持っていないけれど、その分自分に似合うもの、身の丈に合うものを選んで、大切に着ていた。ただの〝服〟じゃなくて〝お洋服〟だった。
 いつの頃からか、服は消耗品になっている。流行に左右され、ブランド力に振り回され、価格破壊に惑わされ、大量の服に取り囲まれて、私たちは今、何を選んでどう着るべきか、見失っている。そんな中、ジャンヌ・ダルクのように反旗を掲げるのが今週のYEOのヒロイン、加藤千晶だ。
「若い頃は、ファストファッションもOKだと思うんです。お小遣いだって少ないと思うし、いろいろなファッションに挑戦することも大切だから。ただ、ある程度大人になって、それなりに自分の芯ができてきたら、自身のファッションについて考えてみてほしい。誰がどのようなプロセスで作った服なのか、あなたはそれをどうして選んだのか。高級品にしろと言っているわけじゃなくて、大切なのはバランスなんです。食べ物と一緒です。即席なものが必要なときもあるけど、体にいいものを摂ったほうがいいときもある。和食洋食中華とあるように、洋服もいろいろなものが共存しているべきなんです」
 ファッション・デザイナーというと、美的センスとか感性至上主義かと思いきや、加藤千晶の中にはそれ以上に燃えたぎる思いがあるようだ。金曜日までの5日間、YEOをチェックし終える頃には、あなたのファッション観に新しい視点が生まれるはず。それはきっと、人生観の一部でもあるはずだ。

  • 出演 : 加藤千晶 かとう ちあき

    服飾作家  1978年生まれ、三重県四日市市出身。バンタンデザイン研究所を卒業後、アパレルデザイナーの経験を約10年積み、2007年フリーランスになる。2009年デザインオフィス「a.ladonna.」設立。服だけにとらわれないさまざまなジャンルとコラボレーションしながら作品やイベントを創り出している。アーティストのステージ衣装やウエディングドレスのオーダーメイド、衣装のアレンジ、リメイクも多数手がけている。  
    ホームページ a.ladonna http://a-ladonna.com/

    “a.ladonna.-sale” SHOP http://aladonna.fashionstore.jp

    “a.ladonna.-rental” SHOP http://aladonnarent.thebase.in

    バリアフリープロジェクト“a.ladonna.+”
    協賛・協力・後援、募集中
    お問合せはinfo@a-ladonna.comまで

    撮影取材協力 (株)江戸ヴァンス 

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  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/