ハープという楽器は、そばで見るとけっこう複雑にできている。コンサートなどでよく使われる大きなハープは、グランドハープ。弦の1本1本の上部に金具が付いていて、しかも足元にはペダルが数個。それを踏むと上の金具がぐぐっと反応して、音が半音上がったり、下がったり。

「そうなんです。ドレス姿で優美に演奏していると、天使とか女神とか人魚のイメージと言っていただくことが多いんですけど、実は足をがばっと開いて楽器を引き寄せ、足元をバタバタと忙しく動かしながら演奏しているんですよ(笑)」

 音域は7オクターブ。47本の弦は金属・羊の腸・プラスティックと、3種類の素材が使われている。ところどころ弦に色がついているのは、音を目で見分けるため。「ド」の弦は赤、「ファ」の弦は黒なのだとか。
 しかも演奏は、ポロロン、と弦を弾くだけではない。現代的な楽曲になるとツメを立ててギターのように弦をかき鳴らしたり、ボディを叩いてリズムを刻んだり。意外と激しい音も出す。

「1番の特徴は、指で直接弦を弾いて音を出す楽器だ、ということですね。バイオリンも弓を使いますし、ピアノも鍵盤を叩きますけど、指の動きがそのまま音に反映されるのは、ハープだけだと思います。ですから自分の性格とか心情が、そのまま音に出てしまうんですよ」

 平尾祐紀子の場合、どんな性格が音にでるのか、というと。

「まあ、おおざっぱというか、けっこう雑だし(笑)。几帳面で異様にキレイ好きなんですけど、せっかちでせかせかしている面もありまして。そういうのがすべて、音に出ちゃいます。表現が深い、情感豊かだと褒めて下さる人もいますけど、どうなんでしょう(笑)」

  • 出演:平尾祐紀子(ひらお ゆきこ)

    金沢市出身。愛知県立芸術大学音楽学部ハープ専攻を経て、同大学音楽研究科修士課程修了。オランダ、マーストリヒト音楽院修士課程修了。第8回北陸新人登竜門コンサートにて、オーケストラ・アンサンブル金沢と共演。国内のコンクールにも多数入賞。帰国後、金沢と名古屋でリサイタルを開催。さまざまなオーケストラとソリストとして共演する一方、ソロや室内楽、オーケストラ客演、現代作品の初演、後進の指導など幅広く活躍している。2016年11月アルバム『華音』をリリースした。

    デビューアルバム『華音 KANON』

    グランドハープとサウルハープ、2種類のハープで演奏した16曲を収録。パッヘルベル『カノン』、ドビュッシー『亜麻色の髪の乙女』、いずみたく『見上げてごらん夜の星を』、アイルランド民謡『サリー・ガーデン』など幅広いジャンルの曲が楽しめる。

    オフィシャルサイト http://harp.yukikohirao.com/
    撮影協力 南麻布セントレホール

  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/