30歳を目前にして、彼女はアメリカに語学留学する。

「10代の頃から海外ロケが多かったので、ふつうに買い物したりレストランで注文したりホテルでチェックインする程度の英会話はできたんです。でも隣に座った外国の人と会話しろと言われたら、出来ない。英会話をちゃんと学びたいと思っていました。だってこの顔でしょ? ハーフと間違えられることも多くて、この顔はしゃべれないといけないなって(笑)」

 3ヶ月間のホームステイを終えて、その半年後、今度はハワイ旅行へ。そこで知り合ったアメリカ人男性とは、英語で会話が弾んだ。

 話が盛り上がって、恋になって、プロポーズされ、トントン拍子で結婚することに。彼女は躊躇なく、アメリカに渡った。

「子どもの頃から働き続けていたので、1回くらい休んでもいいだろう、くらいの感覚でした。人より10年以上早く仕事を始めているのですから、5年10年休んでもいいはず、と。3年5年休んだだけで芸能界から消えてしまうようなら、それまでのこと。別に今消えても、5年後に消えても同じじゃないかって」

 潔い生き方だ。だけどアメリカ西海岸で始まった新婚生活は、ハードなものだった。

「まずは向こうで生きていく、暮らしていく術を習得するのに半年1年はかかりますよね。しかもすぐに子どもができたので、産婦人科に通うにしても、自分で左ハンドルの車を運転して、道筋を確認しながら行かなきゃならない。子どもが産まれてからはさらに大変でした。まずはこの小さな命を守らなければならない。歩くようになればなったで、怪我をさせないように毎日追いかけて(笑)。身内の人間がいないので、ほとんどひとりで育て上げるしかなかったんです。3歳くらいからバレエとフィギュアスケートを習わせているので、その送り迎えもある。学校だって選ばなければならない。夫の仕事の関係で、引っ越しも多かったです。向こうで引っ越しするのは、日本とは比べものにならないくらい労力が必要なんですよ。とにかくずうっと、時間に追われていました」

 そしてこの春、離婚が成立。彼女は今、愛娘とふたりで暮らしている。

  • 出演:武田久美子(たけだ くみこ)

    1968年8月12日生まれ。東京都出身。映画『ハイティーンブギ』のヒロイン役で一世を風靡し、その後グラビアアイドルとして頂点に立つ。結婚後、アメリカへ移住し、一女をもうける。現在はサンディエゴ在住。著書に『武田久美子という生き方』『武田久美子のつくり方 DVD付き』『43歳でもなぜ武田久美子でいられるのか』(すべて小学館)『くみこの掟』(講談社)などがある。サンディエゴでのライフスタイルを綴ったブログも人気。

    オフィシャルブログ http://ameblo.jp/kumikotakeda/

    【新刊紹介】

    『20年先まで艶ある女をめざすあなたへ 武田久美子のシンプルな35の習慣』(トランスメディア) 7月21日発売 雑誌『GLITTER』で連載した記事をまとめた1冊。意識ひとつであなたの見え方、そして人生は少しずつ良い方向に変わっていく! 大事なのはょっとした工夫や努力でも、毎日続けること。美しくなるため、そして幸せになるためのシンプルなテクニックや気付きを、武田久美子がご紹介。

    ヘアメイク:石倉論

    スタイリスト:中村日和

  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/