もともとは、バレリーナ。高校を卒業後、フリーで舞台に立ち、オーディションを受けながらキャリアを積んでいくつもりだった。でもその矢先に、事態が急変。

「母親が脳梗塞で倒れ、言語障害の半身不随になりました。姉は結婚したばかりで妊娠中、妹は大学受験生、必然的に私が介護することになり、ほぼ10年間は介護がメインの生活でした。とてもカンパニーに入る余裕はなくて、これでバレエ人生終わった、とまで思いました」

 バー・アスティエとの出合いは、そうした暮らしの合間、息抜きのように訪れたフランスでのことだった。自分の身体・精神の持つ可能性を大きく伸ばしてくれるバー・アスティエに惚れ込み、創始者のアラン・アスティエ氏に師事してマスターし、それを日本に導入するまで10余年。日本に協会を設立してから丸6年を経て、ようやく日本にも95人の講師が誕生した。近年、バー・アスティエの真価は徐々に浸透し、バレエ界では新国立劇場のダンサーへの講習会も行われた(アラン・アスティエ指導・坂東祐子通訳兼アシスタント)。また、フィギュアスケートや新体操のオリンピック出場選手のトレーニングに導入されたり、女優や伝統芸能のジャンルまで、バー・アスティエのファンは増えつつある。

「介護していた10余年のおかげで、私はバレエ以外の世界を知ることができました。もともとの私はすごくわがままな人間ですけど、いろんな人の気持ちを想像できるようになった。20代の時点でいろいろなものを見て、さまざまな経験しをしたことで、人としてのあり方を教えられたなと思います」

  • 出演:坂東祐子(ばんどう ひろこ)

    4歳よりバレエを始め、クラシック、モダン、ミュージカルなど幅広いジャンルの舞台に出演。1991年より渡仏、クラシック・バレエ、barre au solを学ぶ。リヨンにてアラン・アスティエに師事、アスティエ氏によるbarre au solのオリジナルメソッド〝バー・アスティエ〟(barre Astié)を継承。1996年より毎年「アラン・アスティエ講習会」を日本で企画開催。2009年1月バー・アスティエの普及を目指し「NPO法人バー・アスティエ協会」設立。バー・アスティエ協会理事長、バー・アスティエ協会公認講師。

    公演情報 2016年11月23日(祭・水) 
    バー・アスティエダンスパフォーマンス  ”…À Vous~届けたい~”
    「座・高円寺2」にて

    オフィシャルサイト http://www.barreastie.jp

    フェイスブック https://www.facebook.com/barreastie.jp/

    衣装協力:宮本尚子(GaiaDaysFunctionBand)

    http://www.gaiadaysfunctionband.com

  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/