待ち合わせは恵比寿西口であった。

「デートみたいだねー」

「…」

　チヨンを待つ萩庭桂太は、今日はいそいそしている。
彼女がなかなか来ないところも、デートっぽい味わいがある。そこへ、女性マネージャーと連れ立って彼女が現れた。

「…　よろしくおねがいします」

　おお、日本語だ。日本語ペラペラなのかな。それともマネージャーさんが韓国語ペラペラなのか？？

　40分ほど撮影し、さてインタビュー。カフェに入って、彼女の顔を改めて見る。韓国女優と聞いて意地悪な筆者は必死に整形の跡を探すが、見当たらず。まるで子どもの頃にピアノの上にあったフランス人形に血が通ったかのような、西洋風の美しさである。

「萩庭さん、通訳はどなたが…」

「通訳はいないよ」

「え」

「チヨンちゃん、しょっちゅう日本に来てるから、だいぶしゃべれるんだよ、…　ね」

　チヨンは「ちょっとだけね」と笑った。マネージャーさんは英語で彼女に話しかけている。

　なんか、騙されたような気がする…　どうするんだ、話の濃いインタビューなんてできないじゃないか。…　ひどい。ひどすぎる。

　しかしにこにこ笑うチヨンを見ていると、なんとなく私までがそわそわしている事に気づいた。

　美しいってすごいな。いやそれだけじゃない。ク・チヨンがまっすぐこっちを見て、インタビューに応じようとしてくれている、その真摯な心根が、可愛いなあ、と胸にきたのである。

（取材・文：森　綾）