蜷川さんには今年の『海辺のカフカ』再演では、「成長したな」という言葉をもらったという。

「そう言われなかったら、役者はもう辞めようという気持ちで行きました。ほめてもらって、今年、一番うれしかったです」

 幸先よく、いい舞台が続く。現在、8月1日から東京日比谷・シアタークリエで始まった『タイトル・オブ・ショウ』に出演中だ。

「バックステージもののコメディで、ミュージカルです。僕は脚本家の役。親友の作曲家と組んでオリジナルの作品を作ってブロードウェイで成功しようともくろんでいる。ミュージカルに関してのあるあるネタが満載で、福田雄一さんが日本向けにアレンジしているので、どんどんアドリブも入って来て面白いことになっています。思っているけど口にできないこと、日本の時事ネタも入っているので、幅広く楽しんでもらえると思います」

 11月には天王洲の銀河劇場で、尾上松也との2人芝居も予定されている。

「『スリル・ミー』という作品です。昔シカゴで起こった猟奇殺人事件がモチーフになっていて、ヒッチコックの『ロープ』という映画にもなったりしています。2人とピアノ1台の、1幕ぶっ通し。楽しみです」

 邦楽の家に育った柿澤勇人は、歌舞伎への憧れも素直に口にする。

「歌舞伎、出たいです」

 そのきれいな眉のあたりの丹精さは、確実にそこにつながっている気がした。

  • 柿澤勇人

    1987年神奈川県生まれ。勇人と書いてはやと、と読む。幼少時からサッカーに打ち込み、名門・都立駒場高校にスポーツ推薦で入学。しかし高1のときに観た『ライオンキング』に衝撃を受け、卒業後、07年に劇団四季の養成所へ。半年で『ジーザス・クライスト=スーパースター』で舞台デビュー。数々の主役をつとめ、09年末、新たな活動を求めて退団。11年からホリプロ所属。映画、ドラマへと活躍の場を広げている。
    公式HP http://horipro.co.jp/talent/PM058/
    『タイトル・オブ・ショウ』HP http://www.titleofshow.jp/

  • 取材・文:森 綾

    1964年大阪生まれ。ラジオDJ、スポーツニッポン文化部記者、FM802編成部を経て、92年に上京、フリーランスに。雑誌、新聞を中心に発表した2000人以上のインタビュー歴をもち、構成したタレント本多数。自著には女性の生き方をテーマにしたものが多く『キティの涙』(集英社)、『マルイチ』(マガジンハウス)、『大阪の女はえらい』(光文社知恵の森文庫)、映画『音楽人』の原作など。
    ブログ『森綾のおとなあやや日記』 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影:萩庭桂太