ドラマ『山田くんの7人の魔女』の第3話。いよいよ加恋ちゃんのファーストキスシーンがある回である。台本を読んで彼女は驚いた。

「山本裕典くんとだけキスするのかと思っていたら、女のコとも、イヌともキスすることになっていたんです。いろんなキスシーンを撮影しました」

 その前にもちろん、彼女はキスの練習もした。

「映画を見たり、どんなチュー顔がいいか鏡で見たり。韓国ドラマもいっぱい見ました……」

 なんとここでもマネージャーK女史は強力なアドバイスをしていた。

「蛇口から流れてくる水とキスする練習をしなさい」

「何ですか、それは」と鼻白んでいると、K女史は「私が中学校の頃に流行ったんですう」と、女のコぶった。

 そのキスシーンは、放課後の教室。漫画家になる夢をもつ彼女の絵を見た彼が「おまえ、うまいじゃん」とほめる。うれしくなった加恋ちゃんが、そのお礼にとぐいっと背伸びして、キス。彼女の足首は生まれたての子羊のようにぷるぷる震えた。

 いやー、おめでとう、と私はお赤飯でも炊きたい気持ちになったのであった。

  • 出演:美山加恋

    1996年東京生まれ。6歳から子役として活躍。関西テレビ『僕と彼女と彼女の生きる道』で脚光を浴び、最近では東海テレビ『鈴子の恋』、フジテレビ『高校入試』、映画『ももへの手紙』(声優)、舞台『神様の観覧車』など30以上の人気ドラマ、映画、舞台に出演。現在フジテレビ『山田くんと7人の魔女』でテレパシー能力をもつ大塚芽子役を熱演中。10月からスタートのNHKスペシャル時代劇『雲霧仁左衛門』、10月12日公開の映画『埼玉家族』に出演。
    http://horipro.co.jp/talent/PF117/
    公式ブログ http://ameblo.jp/karen-mi/entry-11599803306.html

  • 取材・文:森 綾

    1964年大阪生まれ。ラジオDJ、スポーツニッポン文化部記者、FM802編成部を経て、92年に上京、フリーランスに。雑誌、新聞を中心に発表した2000人以上のインタビュー歴をもち、構成したタレント本多数。自著には女性の生き方をテーマにしたものが多く『キティの涙』(集英社)、『マルイチ』(マガジンハウス)、『大阪の女はえらい』(光文社知恵の森文庫)、映画『音楽人』の原作など。
    ブログ『森綾のおとなあやや日記』 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影:萩庭桂太