加恋ちゃんのマネージャーはこのYOUR EYES ONLYに何かと売り込みをかけてくださるK女史である。この人の「所属タレントを売り出したい」という思いはすこぶる熱く、その熱さが時折、当のタレントを乗り越えてしまうほどだ。今回も、その熱さから、大変な役をもってきてしまった。

 K女史はプロデューサーにこう相談されたのだ。横で聴いていたわけではないが、たぶん、こんな会話が交わされたのだろう。

プロデューサー「実はさ、キスシーンの多い学園ドラマをやるんだけど」

K女史「ぜひ加恋をお願いします」

プロデューサー「でもさあ……。加恋ちゃん、まだ彼氏いないんでしょ。それなのにキスさせちゃうなんて、心が痛むよ~。可哀想過ぎるよ~」

K女史「大丈夫です! プライベートでそういうことがないからこそ、体験させてあげたいんですっ」

 ……まったく余計なお世話である。

 しかし、仕事熱心でいたいけな加恋ちゃんは「キスシーンがあるけど大丈夫?」と言われて「全然大丈夫です」と、目を見開いたそうだ。そして、件のプロデューサーにはこう告げた。

「私、キスしたいです!」

 プロデューサーのそのときの気持ちは計り知れない。

 もちろん、彼女は『山田くんと7人の魔女』で役を射止めた。それはファーストキスを捧げる事を意味していたのであった。

  • 出演:美山加恋

    1996年東京生まれ。6歳から子役として活躍。関西テレビ『僕と彼女と彼女の生きる道』で脚光を浴び、最近では東海テレビ『鈴子の恋』、フジテレビ『高校入試』、映画『ももへの手紙』(声優)、舞台『神様の観覧車』など30以上の人気ドラマ、映画、舞台に出演。現在フジテレビ『山田くんと7人の魔女』でテレパシー能力をもつ大塚芽子役を熱演中。10月からスタートのNHKスペシャル時代劇『雲霧仁左衛門』、10月12日公開の映画『埼玉家族』に出演。
    http://horipro.co.jp/talent/PF117/
    公式ブログ http://ameblo.jp/karen-mi/entry-11599803306.html

  • 取材・文:森 綾

    1964年大阪生まれ。ラジオDJ、スポーツニッポン文化部記者、FM802編成部を経て、92年に上京、フリーランスに。雑誌、新聞を中心に発表した2000人以上のインタビュー歴をもち、構成したタレント本多数。自著には女性の生き方をテーマにしたものが多く『キティの涙』(集英社)、『マルイチ』(マガジンハウス)、『大阪の女はえらい』(光文社知恵の森文庫)、映画『音楽人』の原作など。
    ブログ『森綾のおとなあやや日記』 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影:萩庭桂太