自然に担ぎ上げたくなる人
安蘭けい
- Magazine ID: 1159
- Posted: 2012.10.25
舞台というものは、瞬間芸の集大成みたいなものだ。
それを安蘭けいは「ぱっと咲いてぱっと散る」と表現した。そこにいつも全力を注ぎ込む。きついことも多いだろうな、と勝手に想像してしまう。前回の舞台『サンセット大通り』では、ノーマ・デズモンドという大女優が落ちぶれていき、やがて気がふれて人を殺すという役を演じた。
「ノーマ・デズモンドが乗りうつってきたようになって、逃れられなくなって。稽古で体を壊し、初日にはあまり万全な状態ではありませんでした。自分で全部抱えてしまうんですね。自分でいる時間が少なくなると自分を見失いがちになる。そこは女優の楽しいところでもあるんですけれど、調整できるようにならないと、と思います」
前回の舞台に引き続き、今回も『アリス・イン・ワンダーランド』で演出を手がける鈴木裕美さんは言う。
「『サンセット大通り』は精神的にも追いつめられる役ですし、肉体的にも9着くらい着替えがあったりして本当に大変だったと思います。でも安蘭さんは『頭撫でて。構って構って』というタイプの女優じゃないし、ご自身をはっきりもっている人だから。トップをやっていらっしゃった方だけれど『さあ私についてこい』的なところもなくて、みんなで自然に担ぎ上げたくなる人なんですよ。今回の『アリス・イン・ワンダーランド』も、出ずっぱりで大変だけど、彼女の得意な歌ったり踊ったりのゴージャスな舞台を見てもらいたいですね」
どんなふうにゴージャスなんですか、と尋ねると「本物のダイヤのついた携帯ストラップみたいな、金の便座みたいなムダにゴージャスな面白さ。でもムダなものほどゴージャスじゃないと、本物じゃないのよ」と、鈴木さんはにっこり笑った。
安蘭けい主演 ミュージカル『アリス・イン・ワンダーランド』
2012年11月18日(日)~12月7日(金)青山劇場
CAST:安蘭けい、濱田めぐみ、田代万里生、高畑充希、松原剛志、柿澤勇人、JOY、
石川禅、渡辺美里
http://hpot.jp/alice/
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出演:安蘭けい
1991年、宝塚歌劇団に入団。『ベルサイユのばら』で初舞台を踏む。06年星組トップスターとなり、08年『THE SCARLET PIMPERNEL』に主演、作品は菊田一夫演劇大賞を受賞。09年4月宝塚を退団し、9月『The Musical AIDA』で女優としてデビュー。『エディット・ピアフ』『サンセット大通り』などで演技の幅を大きく広げる。蜷川幸雄演出の『アントニーとクレオパトラ』では韓国公演も果たす。
http://horipro.co.jp/talent/PF112/ -
取材・文:森 綾
大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1500人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には『マルイチ』(マガジンハウス)、『キティの涙』(集英社)(台湾版は『KITTY的眼涙』布克文化)など、女性の生き方についてのノンフィクション、エッセイが多い。タレント本のプロデュースも多く、ゲッターズ飯田の『ボーダーを着る女は95%モテない』『チョココロネが好きな女は95%エロい』(マガジンハウス)がヒット中。
ブログ「森綾のおとなあやや日記」 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810
撮影:萩庭桂太