蕎麦打ちの疲れも見せず、Tiffanyちゃんは撮影で優しく微笑んでいた。

 どことなくさらっとした、あか抜けたところがある。アジアっぽい湿り気がないとでも言おうか。片言の英語で話を聞くとすらすらと答えが返ってくる。ロケバスの一番後ろで、私は彼女とお母様に修学旅行生のようにインタビューした。

 美人のお母様が言う。

「’93年に家族でロサンゼルスへ移住しました。それまでやっていた芸能プロダクションを人に任せたいと思ったのと、Tiffanyを出産しようと思ったタイミングが同じだったんです。ロスは仕事よりも家族中心に生活できる街。移り住んでよかったと思っています」

 そこから大学はニューヨークなのだから、あか抜けた女の子になるのは当然だ。でもなぜTiffanyはデザインの仕事ではなくタレントの仕事を選ぼうとしているのだろう。

「もともとエンタテインメントをやりたいと思っていたんです。デザインやファッションを学ぶのはその下敷きとして、勉強しておきたかったからです。一番やりたいのは歌なんです。日本でデビューするのが夢ですね」

 日本のDo As Infinityや、m-flo、MONKEY MAJIKらが好きだと言う。

「詞を書くのが元々好きだったし、物心ついたときから歌が好きだった。母親がファッションショーの仕事をしていたりしたときに、そのBGMをお腹の中で聴いていたのかもしれないですね」

 夢は日本デビューだ。

「日本語の発音の美しさにひかれます。Do As Infinityの『深い森』という曲はよく歌います」

 声を聴かせてもらった。儚さとゆらめきのある、ちょっと湿り気のあるいい声だった。そこに私はやっと彼女のアジアっぽさを感じた。

  • 出演:Tiffany

    1990年1月1日台湾生まれ。国籍はアメリカ。アメリカ育ちの台湾マルチタレント。台湾に生まれ、幼少期にL.Aに移住。そこで語学、音楽、舞踏、ファンションを学習。 その後、ニューヨークにあるParsons The New School for Design(パーソンズ美術大学)に入学、主にファッションを学ぶ。 2013年夏に卒業予定。2012-2013年にかけて、台湾にて大規模な芸能デビュー計画がある。

  • 取材・文:森 綾

    大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1500人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には『マルイチ』(マガジンハウス)、『キティの涙』(集英社)(台湾版は『KITTY的眼涙』布克文化)など、女性の生き方についてのノンフィクション、エッセイが多い。タレント本のプロデュースも多く、ゲッターズ飯田の『ボーダーを着る女は95%モテない』『チョココロネが好きな女は95%エロい』(マガジンハウス)がヒット中。
    ブログ「森綾のおとなあやや日記」 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

スタイリスト:ERI
衣装協力:Tネックレス ¥29400、アイスクリームネックレス ¥29400(ともにQ-pot./Q-pot. 原宿本店 03-5467-5470)
撮影:萩庭桂太