女体と精子がテーマ (1)
小松美羽
- Magazine ID: 1024
- Posted: 2012.04.25
世界堂で画材を見た後、小松美羽の自宅兼アトリエにお邪魔することになった。現在、生まれ故郷の長野・坂城町の美術館で展示する作品を創作中だという。
「皆さんで来てくださるというんで、初めて床を掃除しました」
今ふうの、すっきりとしたおしゃれなマンション。一歩足を踏み入れると、そこはキッチンになっている。この床を掃除したらしい。シンクの脇には積み上げられた様々な種類のカップ麺。
「どうぞ」
壁にかけられたおどろおどろしい化け猫のような絵に一瞬たじろぐ。こたつの上には、粘土でつくられたぼこぼこしたオブジェが並ぶ。緑に塗られた上に、気の遠くなるような細かいドットが筆で描かれて、途中になっている。
「これは、何ですか?」
「ちょっと持ってみてください」
まず萩庭桂太が手にとった。指の形に沿って、すっぽりとおさまる。「あ、なんか安心する」。ずっと持っている。萩庭桂太は日々、そんなに不安なのだろうか……。やがて、ぽつりとつぶやいた。
「抱き枕のちっちゃい版みたいな感じ」
小松美羽はそんな様子を面白そうに見守っている。
「はい。そうやって持ってもらえたらいいんです。そういうもの」
そのオブジェの正体は後日、わかることになるのだが。私は太い墨の線のように描かれた大きな絵を見ながら尋ねた。
「あなたが描きたいものはなんですか」
小松美羽は目を細めて自分の絵を見る。
「大地がテーマになることが多いですね。女体と精子がよく出てきます。生命と大地は直結していますからね。母なる大地を示すのが女体。特におっぱい。向かっていくエネルギーを表すのが精子」
この若くてきれいな女の子が描くものが、なぜそんなテーマなんだろう。
(取材・文:森 綾)
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出演:小松美羽
1984年11月29日、長野県生まれ。趣味は狛犬研究、漫画や小説の創作、なぎなた(北信越3位)、水泳と幅広い。女子美術大学短期大学部卒。2004年度 女子美術大学 優秀作品賞、日本版画協会版画展 入選。2012年 小松美羽作品展「画家の原点回帰 ~ウガンダ~」(オリンパスギャラリー東京・大阪)
http://www.miwa-komatsu.com -
取材・文:森 綾
1964年8月21日大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て92年に上京後、現在に至るまで1200人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には女性の生き方についてのノンフィクション『キティの涙』(集英社)、『マルイチ』(マガジンハウス)など多数。映画『音楽人』(主演・桐谷美玲、佐野和眞)の原作となったケータイ小説『音楽人1988』も執筆するほか、現在ヒット中の『ボーダーを着る女は95%モテない』(著者ゲッターズ飯田、マガジンハウス)など構成した有名人本の発売部数は累計100万部以上。
http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810
撮影:萩庭桂太