今季から、ユース監督という立場にある。
「大変です。正直いって、選手のほうが楽ですよ。以前恩師のラモスさんが、監督ほど割の合わないものはないって言っていたんです。その時は意味がわからなかったけど、今はよくわかります（笑）」
　以前、43歳で古巣の東京ヴェルディに戻ってから、永井は後輩の若手選手を集めて永井塾と称し、居残り練習を指導してきた。長い選手生活で身につけた技術を、次世代に伝えようとしていたのだ。だが今指導するのは、プロ予備軍とはいえ、高校生たち。
「全然違いますね。永井塾ではすでにみんなプロになって、日本代表を目指す、向上心の塊みたいな選手ばかりだった。でもここはユースですから。１言って10わかる子もいれば、15言って10しかわからない子もいる。でもこっちが諦めたら終わりだと思うので、それぞれの才能と性格を見極めながら。まずはほめて伸ばして、テングになったら鼻をへし折ってやって、またほめてという繰り返しです（笑）」
　サッカー選手に1番必要なのは、いったいどんな要素なのだろう？
「努力できる才能、ですね。努力します努力しますってみんな言うけど、実際それを本当にやりきるのが、才能だと思う。ふつうの人がひと通りやる努力の、さらにそれ以上やらないと、上にはいけない。それができるのは、才能だと思うんです」
　例えば、本田圭佑選手はユースに上がれず、その悔しさを高校サッカーにぶつけた。長友佑都選手は大学４年間、補欠選手だった。岡﨑慎司選手はプロには無理だと言われ続け、それでも努力しつづけた。それぞれ、努力できる才能の持ち主だ。
「言われてやるようじゃ、意味ないですから。自分でやる子が、上に行くんです。ここ４～５年ですごく感じているのは、根性という言葉がリアルに伝わらないということですね。根性ってほとんど死語になっているんじゃないかな。根性論がすべてとは思わないけど、その意味とか重要さをわからせるのも、自分たちの仕事なのかなって思っています」