永井秀樹は子どもの頃から、変わった少年だったという。
「一応、田舎のほうではサッカーの天才少年と言われていたんです。天才って、何もしなくても人より優れているものですよね? でも僕は、当然みんなと練習はするんですけど、練習が終わってみんなと一緒に帰ったあと、ひとりでグランドに戻って練習していた。みんなが休んでいるときがチャンスだと思っていたんです、子どもながらに。人が休んでいるときにやらないと、人の上にいけないと思っていた」
 高校は、親にも相談せずに、サッカーの名門・長崎県立国見高校に進学。
「たぶん日本で1番厳しい、スパルタのサッカー部でした。25年間選手を続けることができた基礎は、この3年間で作ったと思います。なにしろ一年365日、休みはたった1日だけですから。授業のある日は朝練して、夜も練習。夏休みは朝8時から夜6時まで延々やる。週末は1日に5試合という日もありました。朝の8時から試合を始めて、試合と試合の間も休まず走り続けるんです。昔だから拳固もあるし、フラフラになっても走り続けた。限界を超えないとその先に行けないということを、教えてもらいました」
 ひたすら何キロも走らされたり、トレーニングを延々やらされたり、言い訳無用で殴られたり。ひと昔前の運動部は、理不尽なことばかり。でも国見高校のその3年間が、以後の人生を乗りきる精神力を作ってくれたという。
「学校とか家庭では学べないものが、スポーツの現場にはあると思うんです。自分自身、サッカーの現場に長い時間いるので、そこで学んだものはすごく多いし、社会に出てからその経験がすごく生きている。だって社会って、理不尽なことの連続じゃないですか。なかなか自分の思い通りにはならない。プロサッカーの世界もはっきりいって、ひとりひとりの年俸が違う時点で、ヨーイドンで理不尽なんです。なんで俺よりあいつの年俸が高いんだ、なんでこいつが試合に出るんだ、なんで外人選手は桁が違うんだって(笑)。そういうのに負けない、動じない、屈しないメンタルが大事なんですよ」

  • 出演: 永井秀樹 ながい ひでき 

    1971年生まれ。大分県出身。1992年ヴェルディ川崎(現:東京ヴェルディ)に入団。1995年から福岡ブルックス(現:アビスパ福岡)に移籍後、J1、J2、JFLの各クラブで活躍してきた。その間、各クラブでナビスコカップ、天皇杯、Jリーグのステージ優勝などを経験している。2014年東京ヴェルディに7年ぶり5度目の復帰を果たし、3シーズンを過ごした後、引退を発表。25年間のプロ生活にピリオドを打った。今季より東京ヴェルディユース監督に就任。  

    撮影協力 東京ヴェルディ http://www.verdy.co.jp/index.html

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  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/