さて、笈田さんにはもうひとつの顔がある。実は彼女、かの名ジャスヴォーカリスト、笈田敏夫さんの奧さんだったのだ。50代以上なら、あの声、あの笑顔を覚えている人も多いはず。

「日本のジャズ・ボーカルの草分けというか第一人者というか。英語でしか歌を歌わない人でした。慶応ボーイのボンボンで、でも戦争に行ってるから戦中戦後の辛さも十分味わっていた。蝶ネクタイとタキシードが一番似合う人、でしたね。あれだけ粋にタキシードを着こなせる日本人は、他にいなかったと思います」

 笈田さんが20代前半、ショーの司会をしている頃に知り合い、結婚したのは15年後の39歳のとき。なんと24歳という年の差婚だった。以来15年間、笈田敏夫さんが78歳で天国に旅立ってしまうまで。

「いっつもふたりでマシンガン・トークしてました。話が合うから、いくら話しても話が尽きなかった。すごく優しくて、相手をそのまま受け入れる人だったから、お友達も多かった。女の子にもモテましたよ。浮気もしてたけど、私思ったの。これは他人との戦いではなく、私自身との戦いだって。私の嫉妬心との戦い。こっちが穏やかでないと、負けてしまうって」

 セルフ・カウンセリングできちゃったんですね! 

「今だって嫌なことがあったり、大きな問題にぶつかると落ち込むし悩むし、ウツっぽくなりますよ。なるけど、でも、自分がウツ状態だということが見えるし、なぜそうなったのかがわかるし、回復が早くなりました」

 今度ウツっぽくなったら、カウンセリング、受けてみようかな・・・・。

  • 出演:笈田育子(おいだ いくこ)

    中山ニナという名でDJアシスタント、司会、モデルとして活動の
    後、40代から心理カウンセラーに。目白大学大学院心理学研究科臨床心理学専攻修
    了。臨床心理士。日本カウンセリング学会認定カウンセラー。カウンセリング教育、
    講演、カウンセリングを中心に各地で活動中。主な活動は、目白大学心理カウンセリ
    ングセンター相談員をはじめ、『NPO CESC カウンセリング教育サポートセ
    ンター』、看護専門学校で人間関係論の講義、地方自治体の女性の悩み相談など。

    撮影協力

    『NPO法人 カウンセリング教育サポートセンター(CESC)』
    東京都千代田区神田神保町1-34 風間ビル3階
    http://www.npo-cesc.net

  • 取材/文:岡本麻佑

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://www.haginiwa.com/