エステティシャンとして、経営者として学ぶことは山のようにある。さらに上を目指し、彼女もいくつかの検定や資格を取得した。

「(写真の手に持っている賞状は)一般社団法人の日本化粧品検定協会というところがやっている化粧品検定っていう資格なんです。3級からあって、私が取得した1級は、化粧品の成分や処方、品質や安全性、薬事法まで科学的根拠に基づいた正しい知識を持ち、お客様に化粧品を勧められるようになるための資格なんです。
 資格試験に向けて猛勉強したのは久しぶりのことだったので、合格通知が届いた時は達成感がありましたね。
 改めてお客様のお肌と、この化粧品の成分が合うか、深く考えるようになりました。その後に同協会のコスメコンシェルジュという資格も取得しました。また介護の資格も取りました。全ての資格に言えることですが、人それぞれ知識の度合いや実践方法も違う。資格を取得した後の経験がものをいう世界ですから、もっと上を目指さなければいけないと思っています」

常に向上心を持って仕事に臨まなければ、技術者としても経営者としてもやっていけないのだろう。同じエステティシャンを目指す人へのアドバイスは何か聞いてみた。

「今、エステティシャンやネイリストなど美容関係の仕事を目指している女性が増えていますよね。まずは気持ちだと思います。手からは波動が出るんです。人を綺麗にしてあげたい、喜んでもらいたいという気持ちが大事です。『華やかだろう、自分も綺麗になれるだろう』そういう夢を持って就職する人が山ほどいるんです。美容の仕事は直接人の肌に触れるので、それが好きだと思える方ならばまず第一関門突破だと思います。次に専門の知識と技術。最後に、難しい関門。現実は日々売上げを求められます。そうすると愛情がなくなってきちゃうの。多くのサロンは売り上げに対して歩合の給料制度だったりするから、スタッフ同士お客様の取り合いになってギスギスしだすんです。ここで離脱する方がほとんどじゃないかな。どんな仕事でも理想と現実のギャップはあると思いますけど、歩合や売上目標は頭の片隅に。担当したお客様に合うものを心底思ってお勧めできればお客様は喜んで下さいます。そのために勉強が必要なんだと思います」

悩んでいる方々へ何か言えることは?

「特に女性の場合、不安になりやすいの。それは気質やホルモン・バランスの影響でアップ・ダウンがあります。カウンセリングの時、お客様の悩みを聞きます。肌悩みや体調、生活習慣などうかがっているうちに、実は心に抱えている他の大きな悩みが見えてくることがあるんです。すごく頑張っているのに認めてもらえないと感じていたり、虚しさを覚えていたり。そんな時は必ず『大丈夫』って言うんです。経験上、大概のことは大丈夫ですから。頑張れって言葉が好きじゃなくて。だってみんなそれぞれ頑張っていることでしょう? それは私自身が悩んで八方塞がりでいるとき、誰かに一番言って欲しくて救われたのが『大丈夫』のひと言なんです」

  • 出演:立河宜子(たちかわ のりこ)

    エステティシャン、化粧品販売、エステ・サロン経営。株式会社BASIC BEAUTY代表。一般社団法人化粧品検定1級。一般社団法人コスメコンシェルジュ。介護職員初任者研修。一般社団法人日本抗加齢医学会会員。
    BASIC BEAUTYオフィシャル・ホームページ http://www.basicbeauty.jp
    BASIC BEAUTYフェイスブック www.facebook.com/bb.basicbeauty

  • 取材/文:横田一郎

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://www.haginiwa.com/