立河宜子さんである。現在の職業はエステティシャン。自身で厳選した化粧品の販売も手掛け、エステ・サロンの経営者でもある。まず現在に至るまでのストーリーを聞かせていただいた。

結婚を機に芸能界を引退。芸能界に未練は?

「未練は全くありませんでした。芸能界を辞めたかったんです。もう限界だと感じていて、しばらく休みたいと思っていました。そう思っていた矢先に当時の旦那さんと知り合って、引退することにしました。実は、当時パニック症候群だったんです。それも引退した大きな原因でした」

 病んでしまったのは真面目過ぎることが原因らしい。

「原因はさまざまですが、日本では一般的に精神的な病は『甘え』が原因みたいな論調が今も根強くあって、『根性がない』と思われているのでは? という強迫観念みたいなものがありました。私の場合、仕事を休む=スケジュールを空けるということが怖くてできませんでした。与えられた仕事を断らずにちゃんとやらなきゃいけない。皆の期待に応えなければいけない。といつも思っていました。そのプレッシャーと不規則な生活が長年続き体内時計が壊れてしまったんですね。20代は体力も気力もあって、生意気盛りで負けん気が強かった。その反面、見かけによらず真面目なんです。これは良くも悪くも昭和の両親から教育された賜物でしょうね。
 タレントの仕事は毎日が本番。そうするとずっと緊張が続くって言うのかな。リラックスできる時間が全くなくなってしまいました。仕事中も緊張する、プライベートでも人に気づかれることで緊張する。安心する方法を忘れてしまって。それでついには負けん気の強い私にも限界がきてしまったんだと思います」

 一見華やかな世界だけど、心が病んでしまうほど大変な仕事なんですね。そして彼女は専業主婦に。根が真面目なだけに主婦業は『三食昼寝付きだ』とは思わなかった。結婚後も体調は回復しなかったそうだ。

「結婚後もずっと辛い状態が続いて、いつか治るとは思っていたんですけど。結局治ったのは離婚してからです。専業主婦として『こうでなければいけない』 みたいに考えちゃって、身の回りのことをきっちりきっちりやらなくてはと思っていました。本当は心底受け止めてもらえる場所が欲しかったんだと思います」

芸能界に復帰しようとは?

「これもまた全く思いませんでした。周りからは『なんで復帰しないの? もったいない』って言われましたけど、お金じゃないの。十分すぎるほどにいろんな経験をさせていただいたし、きっちり引退したわけですから」

  • 出演:立河宜子(たちかわ のりこ)

    エステティシャン、化粧品販売、エステ・サロン経営。株式会社BASIC BEAUTY代表。一般社団法人化粧品検定1級。一般社団法人コスメコンシェルジュ。介護職員初任者研修。一般社団法人日本抗加齢医学会会員。
    BASIC BEAUTYオフィシャル・ホームページ http://www.basicbeauty.jp
    BASIC BEAUTYフェイスブック www.facebook.com/bb.basicbeauty

  • 取材/文:横田一郎

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://www.haginiwa.com/