2010年度ミス・インターナショナル日本代表となった金ヶ江悦子は、その年末、中国・成都での世界大会に挑んだ。しかしその年、尖閣諸島問題が勃発する。

「日本の企業が暴徒に襲われてる時期ですからね、怖かったですよ。他の各国代表の人たちが外出するときも『日本人は出るな』とホテルに軟禁状態で」

 舞台でのパフォーマンスにも待ったがかかった。

「私、日本人女性の芯の強さを表現しようとして、殺陣をやろうと日本刀をもっていっていたんです。もちろん、本物じゃないですよ。ところがそれもダメだと。じゃあ、とホテルの傘を使おうとしたらそれもホテルのマークが入ってるからNG。これでやれ、と手渡されたのが造花のヒマワリでした」

 振り回す度に造花の針金がぐにゃっと曲がる。殺陣だかなんだかわからない演技になってしまった。彼女は一礼して舞台裏で大泣きした。結果はそれでも健闘の4位。中国が3位だった。

「でも中国の地方の人とふれあったとき『こんな時期によく来たね』と、本当に嬉しそうに言ってくださった人たちもたくさんいたんです。感激して泣いちゃった。これが国際交流なんじゃないかって。五感でふれあう心の交流こそが壁を越えるんだと思いました」

 ミス・インターナショナル&ミス・ワールドの意義を感じた彼女は、2012年には企画にも携わり、その年の日本代表を見事に世界一にプロデュースした。

「嬉しい経験でした。人が輝いていく姿は自分の輝きにもつながるんですよね」

 その経験を生かし、今はモデルや一般人にもウォーキングや立ち居振る舞いを教えている。インストラクターという新たな職業を彼女は心から楽しんでいる。

「女性をプロデュースする仕事は、自分が今までやって来た経験が全部役に立つ。自分が得てきたことを伝えていくことで人が変わっていくのを見るのは本当に楽しいことです。私自身も、どんどん新しい自分に挑んで行きたい。ミスという名前にこだわらず、新しい自分を作り出していきたいです」

 ボクササイズに励んだり、女子会を主宰したり。パワフルに攻めていく彼女にまた会いたいと思った。

  • 出演:金ヶ江悦子(かながえ えつこ)

    1985年大阪府生まれ。タレント、インストラクター。2010年度のミス・インターナショナル日本代表。
    オフィシャルブログ http://ameblo.jp/kanagae-etsuko/
    Best Beauty 100 http://bestbeauty100.com/

  • 取材・文:森 綾

    大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1500人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には『マルイチ』(マガジンハウス)、『キティの涙』(集英社)(台湾版は『KITTY的眼涙』布克文化)など、女性の生き方についてのノンフィクション、エッセイが多い。タレント本のプロデュースも多く、ゲッターズ飯田の『ボーダーを着る女は95%モテない』『チョココロネが好きな女は95%エロい』(マガジンハウス)がヒット中。
    ブログ「森綾のおとなあやや日記」 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影協力:シーザージム渋谷 http://www.shootboxing-shibuya.com/
撮影:萩庭桂太