この不思議で可愛い女のコたちを100人集めようとしているのは、私のウェブ小説を、映画『音楽人』(桐谷美玲主演)という形でプロデュースしてくれた松本拓也氏だ。キャスティングは彼が行っているが、総合プロデュースをしているのは、山口哲一氏。山口氏は、村上ポンタ秀一、SIONら個性的なアーティストのマネージメントを手がけた。近年は新人アーティストのプロデュースに注力していて、ソーシャルメディアの活用や異業種コラボレーションを実践している。そこへ、Chara、CHEMISTRY、キマグレンら大物アーティストのヒット曲を手がける音楽プロデューサーの浅田祐介が、実際の制作を請け負うことになった。

 しかし、なんと今のところ固定の報酬がないのだという。松本さんが苦笑いした。

「制作に携わる人、アーティスト、スチール撮影に至るまで、関係者全員が音楽や映像が売れたら印税が入るという成果報酬のルールでやってます。これからは、ライブイベントとか、派生する企画で、マネタイズの仕組みは考えたいと思ってます。」

 そこまでしても現状の音楽業界の閉塞感を打ち破りたい想いが、山口さんにはある。

「音楽業界が大きく変わっていくなかで、何か新しいことがやれたらいいね、というのが最初の思いでした。いい歌手を見つけて企画を立ててレコード会社に売り込むというやり方でずっとやってきたけど、前提としてのシステムが賞味期限切れではないかという危機感がありました。ソーシャルメディアが浸透し始めたなかで、そこに最適なコンテンツを考えようと。わけのわからない場所にお金が落ちるんじゃなくて、クリエイターとアーティストに目に見える形で還元される仕組みでやってみたいなと。業界全体の仕組み云々の前に、まずは自分ができることを挑戦してみようと思ったんです」

 制作資金の調達とプロモーションを目的として、このプロジェクトでは“クラウド・ファンディング”も活用し始めている。松本さんが教えてくれた。

「“CAMPFIRE”というファンドで開始24時間以内にサクセスし、2週間で432,000円調達しました」

 現在、ちょうどCAMPFIREにて、2ndシーズンの制作資金の調達を行っている。

 オリジナルプロモーショングッズのプレゼントや動画でのクレジットなど、サポーターへのリターンも考えた。日本ではまだ少ないが、アメリカでは、映画製作などにもこういったファンドが大きく関与しているという。

 CDが売れないとか、音楽業界が衰退しているというのは一面的な物の見方のような気がする。次のシステムは「はじめはノーギャラ」というところからどんどん生まれているのである。そして、今、音楽業界に元気がなくとも、音楽そのものにはいつも元気がいっぱい詰まっているものなのだ。

東京から世界に発信するメディアアート・プロジェクト
"j-Pad Girls" 2nd Season(CAMPFIRE)

http://camp-fire.jp/projects/view/490

  • 出演:山口哲一

    1964年東京都生まれ。株式会社バグ・コーポレーション代表取締役。一般社団法人 日本音楽制作者連盟理事。著書に『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ダイヤモンド社)、近著に『ソーシャル時代に音楽を“売る”7つの戦略』(リットーミュージック、共著)がある。
    https://twitter.com/yamabug

  • 浅田祐介

    1968年東京都生まれ。作曲家。サウンドプロデューサー。95年にフォーライフからデビュー。4枚のアルバムをリリース。その後、数多くのアーティストのヒット曲を手がける。
    https://twitter.com/USKE_ASADA

  • 松本拓也

    1969年兵庫県生まれ。93年電通に入社し、99年に成果報酬型ネット広告の株式会社アクションクリックを設立。05年、同社を電通の子会社に。06年株式会社EA設立。タレントキャスティングを主にソーシャルメディアプロモーションも行う。近著に『ソーシャル時代に音楽を“売る”7つの戦略』(リットーミュージック、共著)。
    https://twitter.com/setap

  • 取材・文:森 綾

    大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1500人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には『マルイチ』(マガジンハウス)、『キティの涙』(集英社)(台湾版は『KITTY的眼涙』布克文化)など、女性の生き方についてのノンフィクション、エッセイが多い。タレント本のプロデュースも多く、ゲッターズ飯田の『ボーダーを着る女は95%モテない』『チョココロネが好きな女は95%エロい』(マガジンハウス)がヒット中。
    ブログ「森綾のおとなあやや日記」 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影:萩庭桂太