「Your eyes only」は美女が出てくるものだと思っていた読者にとっては、今週はおっさん濃度が高く、きっとつまらなかったに違いない。

  そこで、である。今日は素人の美女にご登場願った。この映画『僕達急行』に制作・企画協力をした「鉄旅ガールズ」の代表、山田智子さんである。「鉄旅ガー ルズ」とは、「女子のための、女子による鉄道旅行をプロデュースする」ことを意図してJTB社員である山田さんが立ち上げたプロジェクト。山田さんが指定 した取材場所も「キハBAR」という列車居酒屋であった。

 車両をそのまま客席にした2階には、すでにサラリーマンがほろ酔いで 集っていた。「いや、ぼくたちは鉄道オタクじゃないんですよ。Facebookの友達です」と言いつつ、写真にもおさまってくれる。 彼らは、やや存在感 の強過ぎるエキストラになってくれ、無事撮影終了。さて、山田さんに話を聴くことに。

――この映画にどんなふうに関わられたんですか?

  プロデューサーさんから何か一緒にできないかとお電話があり、一緒にブログを立ち上げたり、鉄旅ガールズが全国のローカル線から32路線をピックアップ、 コメントしたカードを小道具に使ったりしました。鉄道好きの人だけの試写会もやったんですよ。鉄道好きの人と普通の人とではこの映画で笑うポイントが違う のが面白かったですね。

――この映画では鉄道マニアの二人の主人公が出てきますが、実際の鉄道好きな人たちにとって違和感はなかったですか。

  はい。実際に鉄道好きの人は、内気だけど1回結びつくと濃やかで和やか。前に出る、という感じの人はいないんですが、集まると堰を切ったように話し出す。ただ、同じ鉄道好きでも男子と女子は少し違います。男子はまず鉄道に乗るという行為そのものが大切で、鉄道のボディを写真に撮ったりするのが好きな人が 多い。女子は風景とか、鉄道に乗る旅までをも愛しているというか。それにまつわる食事や温泉にも興味がいく。写真を撮るにしても余白があるんです。風景の 色とかにこだわったりしますね。だから映画の中で主人公たちが恋愛に想像力をもてないで失敗していくところは、とてもよくわかったし、鉄道好きな男子たち はとても共感していましたね。

――映画をご覧になられた感想は?

 4、5回見てるんですが、だんだん細かいポイントが目についてきましたね。映像としては投げっぱなしで意味不明な箇所が何カ所かあるんですが、それがまた心地よかったりして。その部分で自分流に解釈したり。キャラクターの心情も何度か見るうちに深まっていきます。

――ふだん、鉄旅ガールズとしてはどんな活動を?

  仲間といろんな鉄道に乗って旅しています。Twitterにフォロワーが1800人くらいいるので、現地から「この車種わかります?」なんて座席の一部だけ写真をあげたりする。わーっとリツィートされますよ。わからないことを質問してもわーっと返ってくる。ありがたいですけど、時々、教え過ぎってこともあ ります(笑)。

(取材・文:森 綾)

映画『僕達急行-A列車で行こう』

2012年3月24日(土)より全国公開
http://www.boku9.jp

  • 出演:山田智子(さとこ)

    1982年7月2日生まれ。2005年(株)JIC(現JTBコミュニケーションズ)入社。プランナーとして、メーカー、サービス、流通などの広告宣伝に携わる。2009年に地域活性・国内旅行促進を目的とした『鉄旅ニッポンプロジェクト』を立ち上げ、鉄道好き女子が集う『鉄旅ガールズプロジェクト』などの企画を推進する。

    鉄旅ニッポン http://www.jtb.co.jp/kokunai/tetsutabi/
    鉄旅ガールズプロジェクト http://www.jtb.co.jp/kokunai/tetsutabi/girls/

  • 取材・文:森 綾

    1964年8月21日大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て92年に上京後、現在に至るまで1200人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には女性の生き方についてのノンフィクション『キティの涙』(集英社)、『マルイチ』(マガジンハウス)など多数。
    映画『音楽人』(主演・桐谷美玲、佐野和眞)の原作となったケータイ小説『音楽人1988』も執筆するほか、現在ヒット中の『ボーダーを着る女は95%モテない』(著者ゲッターズ飯田、マガジンハウス)など構成した有名人本の発売部数は累計100万部以上。
    http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影:萩庭桂太