この映画の主役は今、大河ドラマにも出ているあの松山ケンイチと、女性誌で人気投票をしたら必ず上位の瑛太である。しかしこの二人、いわゆる役者的な「花」をあえて消してオタク風情に徹して強い印象を与えている。

 脇役たちも負けてはいない。この二人のキャラクターも強烈だ。

 主人公の一人、小玉健太(瑛太)の父親が経営するこだま鉄工所に働く二人の外国人、ユーカリとアクティである。本当は二人とも日本語がぺらぺららしいが、映画ではあえて国から出てきたばかりの演技で、画面に微笑ましいコミカルさと、日本と日本人を見つめる意外な視点を生み出している。ユーカリ役を演じたディビッド矢野(スキンヘッドの方)は「ユーカリは海外から技術を学ぶ為に来日し、こだま鉄工所の温かい職場で働くなか、非常に大切なもの、日本の技術や人間性、すばらしい日本力を教えられ成長します。そんな人間模様を見ていただきたいです」と、語る。

 アクティ役の副島淳(アフロヘアの方)もいたって真摯だ。

「この映画のコメディの要素の中に少しでも絡めるようお芝居させていただきました。みなさんにこういうタイプの役者さんもいるんだ、と分かっていただけたらとても嬉しいです。ちょっとした文化のズレだったり、日本人とのニュアンスの食い違いなどをお客さんに観てもらい、笑っていただけたらアクティという役は大成功だと思います」

(取材・文:森 綾)

映画『僕達急行-A列車で行こう』

2012年3月24日(土)より全国公開
http://www.boku9.jp

  • 出演:ディビッド矢野

    6歳までガーナで育つ。現在は日本でテレビ、映画、CM、雑誌などで幅広く活躍中。「ゴールデンアワー」(レギュラー出演中 東京MX) 「imagine-nation」(2011年4月~ NHKワールド)など。
    http://www.remix-model.co.jp/model/david.html

  • 出演:副島淳

    1984年7月14日、日本生まれ。アメリカ人の父親と日本人の母親とのハーフ。 日本生まれ日本育ち。 大学時代までバスケットに没頭し、卒業後はモデルやタレントに興味を持ち大学卒業後は雑誌中心 のモデルとして活躍。 また、2009年1月に公演した舞台「パンク侍、斬られて候」に出演。さらに その夏に影した映画「Give and go」では主演のケニー役に抜擢。
    http://www.remix-model.co.jp/model/jun.html

  • 取材・文:森 綾

    1964年8月21日大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て92年に上京後、現在に至るまで1200人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には女性の生き方についてのノンフィクション『キティの涙』(集英社)、『マルイチ』(マガジンハウス)など多数。
    映画『音楽人』(主演・桐谷美玲、佐野和眞)の原作となったケータイ小説『音楽人1988』も執筆するほか、現在ヒット中の『ボーダーを着る女は95%モテない』(著者ゲッターズ飯田、マガジンハウス)など構成した有名人本の発売部数は累計100万部以上。
    http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影:萩庭桂太