今日の写真に写っているのは、絵本作家の立本倫子(たちもと みちこ)さん。
「映画祭をみんなに受け入れてもらうためには、愛されるキャラクターが必要だ、と思いついたんです。誰にお願いすればいいか、スタッフに相談したら、みんなが最初に名前を挙げたのが立本さんでした。早速交渉に行ったんですが、こちらとしては、著作権フリーにしていただきたい。お願いしたら快く引き受けて下さった。そしてこのキネコが誕生したんです!」
 {PROFILE 立本倫子 たちもと みちこ 絵本作家 子どものマルチメディアを企画制作するレーベル『colobockle』を主宰。著書の絵本に「アニーのちいさな汽車」 (学研)、「ことりのゆうえんち」 (PHP研究所)、「おほしさま」「おひさまとかくれんぼ」 (教育画劇)など他多数。フランス、中国、台湾、韓国など世界で翻訳されている。}
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 まずは言葉を覚えるために、昼間は皿洗いして、夜はコミュニティ・スクールへ。そこからは土産物屋の呼び込みを皮切りに、あらゆるアルバイトをしたという。そんな中、某有名フレンチレストランで寿司コーナーを作るという話があった。
「たまたま高校生のときに回転寿司でアルバイトをしたことがあって、シャリを握るのだけはめちゃくちゃ早かったんです。そこで面接のとき、『僕の実家は何十代も続いている老舗の寿司屋だ、僕に任せなさい』と大ボラを吹きまして(笑)、採用されました。実は何も知らなかったので、作っていたのはヘンテコな寿司でしたけどね。でも客を喜ばせるのは得意でした。映画の『カクテル』みたいに、握ったシャリを後ろから投げて取ったり、踊りながら握ったり(笑)。ハリウッドスターが来るような店だったので、客からのチップがすごかったです」
 そんな中、知り合ったのが、日本の某新聞社のニューヨーク支社長。この青年は面白い、使える、と思ったのか、〝ウチで何かやってみるか?〟と声をかけられたのだ。
「じゃあオートバイでアメリカ本土の48州、回らせて下さい、と企画を出しました。各州で活躍している日本人、たとえばロッキー青木さんとかにインタビューして、その記事を連載したら面白いんじゃないかと。すぐにOKが出たんですが、スポンサーは自分で取ってこいと言われました。そこで日系の企業を回って、オートバイやカメラの提供をしてもらって、回りました。全米を走っている間、ゴルフボールくらいの雹(ひょう)が落ちてきたり、日焼けしすぎて3日間寝込んだり、いろんなことありましたけど、そこで人生を見直しました。夢がどんどん広がって、楽しかったですね。21歳のときのことです」
 ニューヨークに到着してからは、その新聞社で働き始めた。遅延していた広告料の取り立てに始まり、広告の営業を担当。すると五番街の大手ブランドの一面広告を次々とゲットして、実力を評価された。
「すると、日本に戻って営業マンを育ててくれ、と日本から来た子会社の社長に誘われたんです。じゃあ、そろそろ日本に帰ろうか、と」
 映画は、どうなっちゃったんですか?
「この頃は忘れてました(笑)。でも、気になることがひとつ、あったんです。高校生のとき、田舎のデパートで1回だけ、占いをしてもらったことがあって、そのときの占い師がこう言ったんです。『君は25歳までに商売を始めないと、ヤクザになるよ』。それをすごく覚えていて、なんでもいいから早く商売を始めよう、と。アメリカでいろんな経験を積んで、ビジネスを成功させる自信もついてきた。早くしないと、ヤクザになっちゃう、ってね(笑)」
 日本に戻り、広告代理店で1年ほど働いた後、退職。自分で商売を始めるために、建築現場で内装工事の職についた。すると、たまたま働いていた現場で責任者が夜逃げしてしまうというトラブルが発生。田平が工事自体を任されることになった。そこで直面したのが、人材不足という現実。日払いの職人を集めるため、連日奔走したという。
「それで、これはビジネスになると思ったんです。建築専門の人材派遣業からスタートしました。1年か2年で軌道に乗りました」

  • 出演 :田平美津夫  たひら みつお

    1965年、北海道上ノ国町生まれ。小学校3年で愛知県一宮市に移り住む。岐阜第一高校中退。84年から87年までアメリカで生活。帰国後、広告会社に勤務の後、内装工事会社を経営。92年から子ども映画祭「キンダー・フィルム・フェスティバル」にアシスタント・プロデューサーとして参加。紆余曲折を経て2015年、「キネコ国際映画祭」に改称。現在は同映画祭のフェスティバル・ディレクター。人材派遣業、まきストーブ販売業、飲食業のカイクラフト社長。

  • 【キネコ国際映画祭2018】
    会期:2018年11月22日(木)~11月26日(月)
    会場:東京・二子玉川 109シネマズ二子玉川シアター1・ITSCOM STUDIO&HALL二子玉川ライズほか周辺エリア

    公式ホームページ・http://kineko.tokyo/

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    取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/