田平美津夫が映画にハマったのは、小学校3年生の頃。生まれ育った北海道から愛知県へと引っ越したことが引き金となった。
 「ウチは北海道の農家だったんです。オヤジが木こりで、毎日オヤジの馬に乗って学校に通っていました。オヤジは僕を小学校の前で下ろすと、そのまま山に入って木を切るんです。学校は、1学年が16人しかいなくて、授業も映画の『サウンド・オブ・ミュージック』みたい。みんなで山に行って、先生とみんなで歌を歌って、川で魚を獲って、畑でジャガイモ掘って食べる、という。
 そういう自然豊かな環境で育ったんですけど、愛知県に行ったら全然違うんです。学校はすごい詰め込み教育で、毎日宿題がいっぱい出た。でも北海道に宿題という言葉は無かったんです(笑)。だから全然やりませんでした。
 担任の先生が恐くて、すごい恐い先生で、一日中立たされていましたね。勉強できない子は立たせておく、放っておかれるんです。だからよけい、授業についていけなくなる。北海道では僕、クラスで一番成績良かったけど、愛知に移ってからは学力がガタ落ちで、あげく、その恐い担任教師が自宅に押しかけてきて、特殊学級に移ってくれと言われました。僕の両親が粘って、そうはなりませんでしたけど」
 で、映画は?
「そういう辛い状況だったので、小学校3年生からの僕は毎日、家に帰るとテレビで映画ばかり見るようになったんです。夕方からまず、海外もののドラマやってましたよね。『大草原の小さな家』とか。あとは火曜洋画劇場とか水曜ロードショーとか、とにかく外国の映画が大好きで。あの頃は毎日、テレビで映画やってましたから」
 ただただ見ていただけじゃない。
「映画ノートを作りました。その日に見た映画のタイトル、誰が監督で誰が主演俳優で、どういうストーリーで何が良いのか。どんどん映画の知識が増えていって、映画のことなら誰に何を聞かれても答えられる、映画評論家みたいな少年でした。相変わらず宿題はしないけど、映画のことなら、言われなくてもやるんです」
 その頃なら、あの淀川長治先生がご健在だったはず。
「そうそう、淀川長治先生に電話したことあります。電話番号を調べて電話したら、お目にかかることはできなかったけど、電話には出ていただけました。何を話したかは、覚えていないんですけどね(笑)」
 小学校3年4年と恐い担任がいたおかげで、映画漬けになった田平少年。その後担任が替わり、状況は好転したけれど、映画への情熱は増すばかり。そして、その辛い2年間のことは、忘れられないという。
「人生で一番キツい時期でしたね。でも映画が僕を救ってくれた。そして映画が、その後にくるいろんな人生の荒波を乗り越える術を、教えてくれたんです」

  • 出演 :田平美津夫  たひら みつお

    1965年、北海道上ノ国町生まれ。小学校3年で愛知県一宮市に移り住む。岐阜第一高校中退。84年から87年までアメリカで生活。帰国後、広告会社に勤務の後、内装工事会社を経営。92年から子ども映画祭「キンダー・フィルム・フェスティバル」にアシスタント・プロデューサーとして参加。紆余曲折を経て2015年、「キネコ国際映画祭」に改称。現在は同映画祭のフェスティバル・ディレクター。人材派遣業、まきストーブ販売業、飲食業のカイクラフト社長。

  • 【キネコ国際映画祭2018】
    会期:2018年11月22日(木)~11月26日(月)
    会場:東京・二子玉川 109シネマズ二子玉川シアター1・ITSCOM STUDIO&HALL二子玉川ライズほか周辺エリア

    公式ホームページ・http://kineko.tokyo/

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    取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/