辛島美登里の歌を聴いていると、自分がそこにいる、と感じる。同じような恋をした。同じような切なさを知っている。似たような男に恋をした。あの頃同じ思いをした。
「詞を書くときにいつも心がけているのは、ふつうの人を主人公にすることです。身近なものを大事にしながら、身近な人を書きたいんです。名前を検索しても何も出てこないような、ほぼほぼの常識を持っていて、ほぼほぼ自立はしているけれどほぼほぼ気が弱い、人が良いから大事なところで全部手放してしまうような。つらいときには泣いちゃうけれど、でも泣くのは彼の前じゃない。人前で、彼の胸にすがって泣いたら、慰めてもらえるかもしれないのにそこでは泣けなくて、ひとりになったときに初めて泣く、そういう女の人を書きたいなって」
 人に甘えたり頼ったりしない。計算したり謀ることもしない。自分にも他人にも、嘘をつかない女だ、きっと。
「いつもメロディを先に作って、詞は後から、四苦八苦して作ります。そしていざ出来上がってみると、最初のイメージとはかけ離れた、まったく違うものになっていることがあるんです。それをみて、ああ、私は本当は、これが言いたかったんだな、とか、今私はこういうモードにいるんだって、自分が書いた詞に教えてもらっているような」
 ヒロインはいつも、それを作った辛島自身と、どこか似ているのかもしれない。

  • 出演 :辛島美登里 からしま みどり

    鹿児島県出身。国立奈良女子大卒業後、作曲家として活動を開始した。多くのシンガーに楽曲を提供した後、1989年アーティストデビュー。90年『サイレント・イヴ』が大ヒット。以来、さまざまなアルバムを発表しつつ、コンサートやライブ、ラジオのMC、エッセイなど幅広く活動中。

    オフィシャルサイトhttp://www.karashimamidori.com/

    新譜情報 10月25日リリース決定「Cashmere」

    〈コンサート情報〉

    『辛島美登里Christmas Symphonic Concert 冬の絵本2017〜赤ずきんの恋〜』

    12月23日(土)すみだトリフォニーホール 大ホール
    
開場16:30 開演17:00  S席 ¥8,000 A席 ¥5,500
    スペシャル・ゲスト:伊礼彼方
    音楽監督・指揮:千住明 演奏:新日本フィルハーモニー交響楽団

    ピアノ:扇谷研人 ギター:伊藤ハルトシ
    
チケット一般発売:9月16日(土) 
    
お問合せ:サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(10:00-18:00)

    ヘアメイク 国府田 圭  

    HP http://kokufudakei.com/

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  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/