『ブラスト!』のメンバーは、ひとりひとりが優秀なパフォーマー。数ある作品の中には、たったひとりにスポットライトが当たるソロのシーンもある。でも『ブラスト!』の魅力はやはり、緻密に構成された集団のパフォーマンス。息の合ったチームプレイ、多彩で幅広い表現が、観るものを圧倒する。和田拓也は、そんな『ブラスト!』の魅力にとりつかれたひとりだ。
 彼は小学校低学年から、モダンバレエを徹底的に仕込まれた。
「とても厳しい先生の教室に行かされて、三角定規でバシバシ叩かれながらのレッスンでした(笑)。その先生がコワいのと、バレエ教師をやっていた母親の期待が大きいので、中学高校と、なんとか辞めずに続けていたような」
 高校2年の春、学校の吹奏楽部にマーチングバンドがあること、そしてマーチには旗を振って踊るカラーガードという存在があることを知る。
「クラスメートがカラーガードをやっていて、彼にいろいろ教えてもらったんです。アメリカの学校のドラムコーとか、それが進化した『ブラスト!』とか、ビデオの映像を見せてもらって、一気にのめり込みました」
 彼にとって新鮮だったのは、集団競技という形。彼はチームメイトというものを、持ったことがなかったのだ。バレエのコンテストでは、常にひとり。プレッシャーも達成感もひとりで受け止めてきた彼にとって、団体行動は未知の世界だった。
「大人数でわいわい、楽しそうだな、と(笑)。しかも、集団というのはやる気のある人間、それほどでもない人間とさまざまですよね。全体を揃えるためには一番力の無い人に合わせなければならないし、個人の都合よりも集団の都合を優先させることになる。でも、やるからには頑張ろう、と最初はたったひとりが考えたことでも、いつかそれが周りに伝わってチームが一丸となると、すごい力に発展するんです。僕たちも結果的に全国大会に進出することができて、その成功体験が僕の意識を変えました。カラーガードを知る前は、いつかソロのダンサーになるのかな、と漠然と思っていたけれど。みんなで何かをやって成し遂げる経験を、もっともっと味わいたいと思った」
 そしていつかは『ブラスト!』に。そんな気持ちを抱えてアメリカに渡り、ドラム&ビューグルコーにカラーガートとして入団。ドラムコーインターナショナル(DCI)で最優秀カラーガード賞を獲るなど、華々しい結果を残した。けれど「『ブラスト!』への道は遠かったです」。
 22歳でいったん帰国。日本でカラーガードの指導者として活躍しながら、チャンスを待った。27歳のとき、これが最後の挑戦、と送ったビデオがオーディションを通り、とうとう『ブラスト!』の一員に。今回の日本公演が、彼にとって4回目のツアーになる。
「やっぱり集団でひとつのものを作り上げていくのは、楽しいです。自分がダメだったときに周りの演技に救われたり、逆のことが起こったり。特に日本で『ブラスト!』が多くの方に愛されるのを感じているので、自分がその一部として活躍できるのが、すごく心地よい。高校生のときに自分が下した決断は、正しかったと思います」

  • 出演 : 和田拓也 わだ たくや

    2003年高校卒業後渡米。2005年カラーガードチーム『Lifeguard』を結成、2008年マーチングバンド『LifeguardⅡ』として再結成。2014年自身のパフォーマンスユニット『Divice Under Test』を結成。
    コレオグラファーとしても活躍。  
    オフィシャルサイト https://www.takuyawada.com/

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  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/