街路樹の葉っぱが色づいた街中で、撮影開始。すると土村芳は足元の落ち葉を拾って、自分の着ている黒いセーターに1枚、また1枚と貼り付けていく。ブローチみたいだ。ハギニワ氏のカメラがここぞとばかりに、シャッシャッシャッと音をたてる。その場で求められている女性像を瞬時に感じ取り、表現する術を、彼女は知っている。

 反面、まだまだ苦手なこともある。NHK連続テレビ小説『べっぴんさん』の出演俳優を紹介する記者会見で、「田坂君枝役をやらせていただきます、土村芳といいます」と挨拶した後、しばし「・・・・・」。菅野美穂、中村玉緒などベテラン俳優と一緒に並び、報道カメラがずらっと並ぶ中、緊張のあまり言葉が続かない場面があったのだ。

「ふだんが、あまりこう、上手じゃないんです(笑)。お芝居していないところで人前に立って、『土村です』って言うのが上手じゃなくて。観客やカメラ前で役を演じるのは全然平気で、楽しいんですけど、全部取り払われた素の状態だと一気に〝ど、どうしよう?〟ってなってしまうんです」

 記者会見ではその場を引き取って番組担当のプロデューサーが『お芝居をするとガラッと変わる。舞台の上に立つと変わるタイプです』とコメントしていた。思わず、北島マヤを連想してしまう。舞台に立つといきなり役に憑依してしまう、天才女優?

「いえ、そう解釈していただけるのはありがたいですけど、ふだんがダメすぎるっていうことですよね(笑)」

  • 出演:土村 芳(つちむら かほ)

    1990年12月11日生まれ。岩手県出身。京都造形大学映画学科卒。舞台・映画・CMなどで活躍。主な出演作に映画『カミハテ商店』『弥勒-MIROKU-』『劇場霊』、ドラマ『ワカコ酒』『フラガールと犬のチョコ』『コウノドリ』、舞台『銀河鉄道の夜』『母に欲す』など。現在は映画『何者』、NHK連続テレビ小説『べっぴんさん』にヒロインの友人・君枝役で出演中。
    オフィシャルサイト ヒラタオフィス http://www.hirata-office.jp

    HAIR&MAKE:石邑麻由

    STYLIST:道端亜未

  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/