#3 プレッシャー、大好き!
アーティスティック・ビリヤード・プレイヤー 江辺香織
- Magazine ID: 3351
- Posted: 2016.08.10
ビリヤードが上手な人は、クールで沈着冷静、瞬時に状況判断ができそうなイメージ。
「メンタルスポーツと言われています。私が思うに、ビリヤードをやるのに一番大事なのは、頭でイメージしたことをそのまま体で表現する能力、ですね。球の動きは入射角と反射角で成り立っている、物理学なんですよ。台上の球の位置を見て、ここを撞けばこうなるというイメージを、そのまま自分が再現できるかどうか。それがビリヤードのセンスだと思います。あとは集中力、忍耐力、戦略を作る頭脳、ですね。けっこう奥深いんですよ」
江辺香織本人は、メンタルがめっぽう強い。
「緊張はするけど、あがるってことがないんです。ミスしたり、リードされて逆境に入ると途端にゾーンに入って、力が出る。ちょっとムカついたときのほうが、良いプレイができます(笑)。だから大舞台が大好き。千人以上の大観衆に見られてプレイするほうが、好きです。
そんな江辺香織が、トーナメントを引退し、29歳から本格的に取り組んだのが、アーティスティック・ビリヤード。キューと球でさまざまなミラクルショットを見せる、パフォーマンスに特化したビリヤードだ。きっかけはビリヤードをまだ始めていなかった、17歳の頃だった。
「父が主宰したイベントで、トルコの英雄と呼ばれるセミ・サエギナール(Semih Sayginer)さんが出演したんです。観客の中から〝そこの女の子、出てきて〟と呼ばれて、ビリヤード台の上に寝かされて、私の頭の形を沿うようにキュイーンと手玉がカーブするパフォーマンスでした。あとからその映像を見たらめちゃくちゃ感動してしまって、憧れました。〝私もいつか同じことをしたい!〟と思ったんです」
キューを上から使うマッセの姿勢から、撞かれた手玉は跳んだり戻ったり揺れたり回ったり。撞きの角度や力加減によって変幻自在に操られ、球が障害物をぐるっと回ったり、台上を滑っていく様子は、まるでマジックを見ているよう。
「ショーのときは、お客さんに楽しんでいただくことを第一にプレイします。もちろんミスのないように頑張りますけど、たとえミスしてしまっても、ライブならではのショーの一部として面白がっていただけるように、トークも勉強中です(笑)」
-
出演:江辺香織(えべ かおり)
1984年生まれ。兵庫県出身。2006年12月JPBAのプロテストに合格、史上最年少プロの記録を更新した。
Facebook page https://www.facebook.com/ebekaori.official/
ヘアメイク&フォトスタジオLuff :本多将人
撮影協力:
東京ビリヤード倶楽部 http://www.tokyobilliardsclub.com/index.php
取材/文:岡本麻佑
国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。
撮影:萩庭桂太
1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
http://keitahaginiwa.com/